東大化学で高得点・満点を狙う効率的勉強法と参考書総まとめ

入試直前期、ぼくは直近10年間の東大理科(物理+化学)過去問で120点満点中平均117点取れていた。割合でいうと9割7分。しかも150分中、80分くらいで解けていた。もちろん二周目ではなくて初見である。したがって国内の同学年では、指折りのレベルで受験理科をマスターしていたといえる自信がある。

そんなぼくも、理科はもともと別に好きでも得意でもなくて、秋の東大模試では物理+化学で120点満点中40点くらいという、東大受験生としてはやや見劣りするくらいの数字だった。この結果には少しだけ焦ったが、センター試験から二次試験までの1ヶ月間の猛勉強で、冒頭のとおり過去問で満点近くとれるレベルまで達した。

この経験をもとに、今回の記事では短期間で東大化学を得点源にする効率的な勉強方法をご紹介する。ただし、決して怪しい裏道ではなく、王道かつ正攻法である。ぼく自身が中高6年間塾には通わず独学で通したので、今回の記事は同じように独学で頑張る人を対象としている。

 

基本の考え方

化学の得意・不得意について

化学は「理解・暗記・計算」がどれもハイレベルで求められる。生物ほど暗記は要らないし、物理ほど計算は要らない。しかし、そのどちらもハイレベルで求められるのが化学だ。

東大レベルの化学で高得点・満点を狙うためには、とにかく難しい問題をしっかりと理解し、「何を覚えていればその問題が解けたのか」を常に自問し、細かい細かい知識を埋めていく作業が必要だ。

しかし後述するとおり、化学については参考書や問題集が非常に充実している。したがって、多くの知識が求められるといっても、臆するには足らない。

理論+無機 vs. 有機

「化学は理論・無機・有機の3分野に分かれる」とよく言われる。「理論」とは物質量molや熱化学方程式に代表される計算分野であり、「無機」とは物質の色や水溶性などの物性(物質の性質)に代表される暗記分野である。「有機」とは、有機物の構造決定を主とする分野のことを指す。

しかし、東大レベルの問題では理論と無機はほとんど融合してしまっている。理論の問題に物性の知識が問われたり、無機の問題にゴリゴリの計算が出たりということはよくあるのだ。一方、有機分野は本当に独立した一分野という印象を与える。

したがって、初めから化学は「理論+無機」と「有機」の2つに分かれる、という理解でいた方が戸惑いが少なくて良いかもしれない。

付箋で覚える

化学については特に、ワンポイントで覚える知識が非常に多い。たとえば

注:このメモを書いた頃は東大の過去問で60点中45点くらいとれていた。高3の夏休み頃でこのメモの内容が分からなくても不安になる必要はない。

これはぼくの受験生時代の(汚い)メモで申し訳ないが、化学を極めようとすればするほど、こういう一文のメモ書き程度の分量で覚えないといけないことが山のようにある。これを全部専用のノートに書き連ねてもいいのだけど、ぼくのオススメはPost-it(特大)を使うこと。

Post-it 長方形 75x127mm

使い方は、

1. 覚えるべきことが出てきたらPost-itに書く。

2. それが出てきた問題集か参考書の表に貼る。

3. 1日経ったらその付箋をノートへ移動する。

4. 定期的に付箋がたまったノートも見直す。

2のステップで問題集か参考書の表に貼ることで、その日のうちに3回くらい自然とその付箋を見ることになるので、自然な反復学習ができる 。 直接ノートに書き込んでしまうよりも、初日の復習回数が自然と多くなるのが良いポイントだ。

問題集の解き方

問題集を解くときには、

1. 1分考えても分からない問題は答えを見ること。

2. 計算問題は極力ノートに書いて解くこと。

3. 分からなかった問題にチェックする。解けたけれど悩んだ問題にもチェックする。チェックが消えるまで2周、3周と解くこと。

この3点を守ってほしい。1.は時間短縮のためと挫折を防ぐため。2.は、分かったと思った問題でもいざ計算を進めてみると思ったとおりに行かずつまずくことが多いため。自分の「分かった」をあまり信用してはいけない。

3を守ると、1周目は7割近い問題にチェックがつくと思われる。だがそれでいい。2周目で25%、3周目で5%以下になっている。2周目3周目は解くペースも上がっているので、「何周も解く」という言葉の印象の割に、そこまで膨大な時間がかかるわけではない。

反復学習をシステム化する

人間の記憶と忘却のメカニズムについての研究が進んでいる。それによると、効果的な復習は、学習から10分後、1日後、1週間後、1ヶ月後…と周期を伸ばしながら繰り返していくことが大事だとされている。そうはいっても、学習したこと全てについて自分で周期を管理しながら復習するのは労力ばかりが大きい。おすすめは、自然に反復学習ができるシステムを作っておくこと。

これについては、上で紹介した「付箋で覚える」と「何周も解く」というのが良い反復学習のシステムとなる。この2つを実践することで、適度な間隔を保ちながら自然な反復学習ができるようになっている。

淡々と勉強できている友達を探す

周りを見回すと、勉強しているようで消しゴムを眺めていたり参考書を漫然とパラパラめくっていたり、1時間勉強しただけで昼寝や気分転換をしてしまったりしている人が意外と多い。もしあなたが本気で成果を出そうとするのなら、そうした人を見るのではなく、ただただ淡々と勉強し続けている人を見ること。そして、その人の勉強姿勢を真似ること。もしそういう人が周りにいない場合、あなた自身がお手本になること。

Be the change you want to see in the world. - Mahatma Gandhi

「世界に変化を求めるのなら、あなた自身がその変化となりなさい」

その他勉強全般に関すること

過去に書いた勉強のコツについてをご参照ください。

参考書・問題集(導入編)

この章では、センター試験を経て東大二次試験化学まで対応するための鉄板の書を紹介する。

参考書(導入編)

DOシリーズ

  

鎌田の理論化学の講義 福間の無機化学の講義 鎌田の有機化学の講義

学校の授業+α~センター試験のレベル感のシリーズ。評判はかなり良い。

東大入試レベルよりは遥かに下の内容ではあるが、高1~高2生で、学校の化学の先生がハズレだなあと感じている人にはオススメ。特に理論化学は先生の教え方によって理解度に差が出やすいので、一冊信用できる参考書があると安心。

このシリーズはどれも信頼できるが、「福間の無機化学」は特にしっかりと内容が整理されている。無機化学は学校で習っただけでは「ごちゃごちゃしてなんだかよくわからんな」という印象を受けがち。なので、きっちり整理してくれている参考書を手元においてパラパラめくっていると役に立つことが多い。Amazonで「なか見」で内容が見られるので、気になる人はチェックしてみると良い。

問題集(導入編)

基礎問題精講

化学 基礎問題精講 (略称:基礎問)

問題数が102題と少なめな分、解説が圧倒的に詳しい。物理でいう「物理のエッセンス」のように、問題数は少ないが基礎を独学で習得するにはピッタリ。信頼して質問できる先生がいない場合には、解説が詳しいこれが一番いい。

東大受験生にとっては、後で必ずやることになる「化学の新演習」と難易度的に被りが少ないので「化学の新演習」に入る前の一冊としておすすめできる。これをやったあとすぐに化学の新演習を解こうとするとかなり難しいと感じるかもしれない。自分の対応力や時間的余裕に応じて、すぐに「化学の新演習」をやるか、間にもう一冊中級編の問題集(後述)を挟むか考える必要がある。

なお、高校の授業が良くて、化学の基礎がきちんと理解できている場合には、このレベルの問題集は飛ばしてしまってもかまわない。Amazonで「なか見」で内容が見られるので、気になる人はチェックしてみると良い。

標準問題集

理系標準問題集 化学 (略称:標問)

問題数は202題と、多すぎも少なすぎもしない量。また解説も詳しい。東大受験生で、時間がまだまだ余っている高2生にはお勧め。東大志望の高3生であれば、このレベルにあまり時間をかけていられないので、より問題集の少ない、上記の基礎問題精講をオススメする。

標問と略される問題集はあと一つ(化学 標準問題精講)あってややこしいので略称には要注意。

問題集(中級編)

化学の新標準演習

 

化学の新標準演習 (略称:新標準)

左が新課程の方。右の「化学Ⅰ・Ⅱの新標準演習」は旧課程。といっても、化学においては新・旧課程は名ばかりでほとんど入試問題の内容に変更はない。

右の旧課程版でさえ359題と問題数が非常に多かったが、左の新課程版では560題と圧倒的な問題数。ただしこの増量分は「センターチェック」というセンター形式の選択式の問題がほとんどのため、うまく使える人には良い改変だ。解説も200ページ超えで非常に詳しい。

東大受験生としては、「化学の新演習」をやる前のステップとして利用したい。したがってこの問題集に手を出す場合はあまり完璧に何周もしようと試みず、高2~高3の一学期の間にさらっと終わらせておくこと。これをキッチリ終わらせてから「化学の新演習」も3周解くとなると入試にはとても間に合わない。

重要問題集

実戦 化学重要問題集 (略称:重問)

問題数は275問。国公立大学(旧帝大含む)受験には鉄板の問題集。良問揃いで問題数も275問としっかりしていて網羅性が高い。

「化学の新標準演習」と同じく、東大受験生が使う場合は、「化学の新演習」をやる前のステップとして利用することとなる。気になる問題150~200問程度でもいいので、高2から高3の夏休み前までには一周は終わらせておきたい。骨のある問題も多く、最難関大の受験勉強への橋渡しとしては一番おすすめできる問題集。一部の良問は、「化学の新演習」を始めてからもたびたび戻ってきて解きたいくらいだ。

ただし解説がそれほど丁寧ではないので、分からない部分を「化学の新研究」で独学で解決できる能力があるか、信頼できる先生がいる場合でないと使いづらい。

標準問題精講

化学 標準問題精講 (略称:標問)

問題数は102題。「標準」とあるが難易度は高めで、重要問題集のB問題レベルの問題が集められている。厳選された良問が多い良い問題集だが、網羅性に欠ける。東大物理で効率的に及第点を取りたければ良いが、高得点~満点を取りたいのであればやや網羅性不足。

参考書・問題集(上級編)

東大レベルはここからが本番。脳から汁が溢れ出るような努力を続けて道を切り開く。

参考書

化学の新研究

化学の新研究 (略称:新研究)

必須。これ無しで化学を勉強するのは、辞書無しで英語を勉強するのと同じ。一応参考書のくくりだが、辞書のような感覚で使うのがいい。これを初めから読み進めようとするのは無謀。問題集を解く際に傍らに置いておいて、問題集の解答解説を読んでも解決できなかった場合のみこの本を開いて解説を探すというスタイル。このように使用条件を限っても、入試までの間に相当回数本書を開くこととなる。

 

このように使う都度どんどん書き込んでいくと、時が経つにつれて最高のパートナーになっていく。

問題集

化学の新演習

化学の新演習 (略称:新演習)

目安: 大問1つ15分。1周するのに80時間。3周合計150時間。

問題数は331題とやや多め。「大問1つ15分では解けない」と思うかも知れないが、1分考えて分からない問題はすぐに答え(と新研究)を見ることで勉強を効率化していけば可能。何冊も手を出すより、この1冊を完璧にする。

解けなかった問題、解けたけど悩んだ問題にチェックして何周も繰り返すこと。ご覧のとおり、たとえばこのページは、ぼくが一周目に解いたときには悩まずに解けた問題は一問も無かった。一周目は7割以上にチェックが付くが、それでいい。徹底的な反復学習によってのみ力がつく。このやり方で3周やれば、東大化学の過去問で7割取れる力がついているはずだ。

有機化学演習

有機化学演習 (略称:なし。そのまま「有機化学演習」)

東大受験生としては、有機化学の知識の定着用として使いたい。全問解く必要はない。例題だけやるのでもOK。

東大受験では、簡単なことが多い有機分野でキッチリと9割以上取ることが重要になってくるので、知識に抜け漏れがあっては困る。知識の確認に東大受験生の多くが使い続けている定番の問題集。

こんな感じで基礎知識が綺麗にまとまっているので、買うつもりなら知識の整理のためにもなるべく早めの段階で。

25ヵ年

 

東大の化学 25ヵ年

必須。東大には東大の、繰り返し繰り返し出題されている題材や考え方がある。これは本当に驚くべきことなのだが、2~3年周期で同内容または同じ切り口の出題が何度も何度も繰り返されているのだ。東大の入試問題を作っているのは東大の教授なのだが、やはり教授にとってみても、東大の作風を守るという意味でも、実際の過去問と近い切り口・視点で出題しておくのが安心なのだろう。

新演習を3周すれば東大過去問で7割取れると書いたが、逆に言うと新演習だけでは極めても7割までしか伸びないように感じる。東大の過去問を10年分くらい解くと東大だけが繰り返し扱う題材や思考法がわかってくるので、その段階で初めて満点近くが狙えるようになる。

なるべくたくさん入試問題を解きたい人は、「25ヵ年」は少し昔のものを買って、最近の過去問は全科目セットの過去問で入手するなどの工夫をするとより多くの過去問が確保できる。

「25ヵ年」は年度順ではなく分野別に問題がまとまっているのが、使い方によっては使いづらい。ぼくは常に自分の実力を測りたかったので、切り離して年度別に並べ替えて化学とセットにして本番さながらに時間を計って解いていた。(注:裏表で別の年度の問題が印刷されていたりするので、切り離して年度ごとに解くのは結構管理が大変)

東大化学

駿台の講習「東大化学」に行くともらえる教材。めちゃくちゃ難しいので、東大理3を目指す人など東大化学で高得点を取る人が冬休み以降にやるような内容だけど、濃密でかなり使える。受験生時代にいろいろな講習に(タダで)参加した経験から言うと、駿台は講習教材の分量が圧倒的。1回駿台の志望大学の講習に出て教材だけもらっておくといい。写真のものは夏期講習でいただいたもの。冬期講習等でも多分似たような教材がもらえるはず(要確認)。

過去問演習

過去問を解く時期

新演習を3周解き終わってから取り組みたい。時期としては、二次試験の過去問は遅くとも冬休み前くらいには開始する。

それまでの間は、問題集で志望校の過去問を見かけた場合はなるべく避けるようにしたい。過去問演習をしながら常に自分の実力を測れる状態にしておくほうが自分の立ち位置が分かりやすいし、モチベーションアップにも繋がるので。

過去問演習と復習

過去問は解くだけで疲れてしまって、復習が疎かになってしまうという人も多いがそれは非常にもったいない。そうなってしまう一つの原因は、1年分の過去問を全教科まとめて解いてしまうことだ。たまにはそういうことをしてもいいが、基本的にはこれをするとエネルギーを使い果たして復習が疎かになってしまう。普段の過去問演習では復習の方が大事なので、復習のエネルギ-を残しておくためにも過去問は一教科だけで解いて、その都度復習するようにしたい。

150分のテストなら復習に1時間以上かかってしまうかもしれないが、新しい問題を次々に解くよりも確実に濃密な学びができる。ここをサボるのは一番やってはいけないことだ。

問題集から過去問の流れ

以下では、東大化学で高得点から満点を狙うための、効率的な参考書・問題集のセットを紹介する。

 

  

化学の新研究+重要問題集+化学の新演習+過去問

化学の新研究は常に傍らに置いておく。

重要問題集はさっさと終わらせ、化学の新演習を3週かけて完璧にする。その後、東大の化学25ヵ年を徹底的にやる。

高2生や学校の化学の先生があまりよくない人は、これら3冊に入る前に、導入編で紹介した参考書や問題集も用いた方が良いかもしれない。たとえば、DOシリーズと基礎問題精講など。

まとめ

化学は主体的に学び始めるまではさっぱり分からないものだ。高2までは多くの学生が、喜々として化学の授業をする先生を見ながら「何言ってんだこの人…」と内心思っているかもしれない。

ただ、自ら学んで、各単元の基礎的な内容が自分の言葉で説明できるまで理解できたときには、一気に学習した知識が有機的に結びつき始め、そこにぼんやりと全体像が浮かび上がってくる。そこまで辿り着くのはとても苦しいが、その先はあと少しで晴れ渡った世界が待っている。

最後に、「化学の新研究」「化学の新演習」「化学の新標準演習」という三冊の名著を書き上げた卜部先生とともに、受験生のみなさんに次の言葉を贈りたい。

苦痛なしには勝利なし、荊を避けては王座なし。

そこに、大学受験の枠を超えた学びがありますように。

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東大物理で高得点・満点を狙う効率的勉強法と参考書総まとめ

入試直前期、ぼくは直近10年間の東大理科(物理+化学)過去問で120点満点中平均117点取れていた。割合でいうと9割7分。しかも150分中、80分くらいで解けていた。もちろん二周目ではなくて初見である。したがって国内の同学年では、指折りのレベルで受験理科をマスターしていたといえる自信がある。

そんなぼくも、理科はもともと別に好きでも得意でもなくて、秋の東大模試では物理+化学で120点満点中40点くらいという、東大受験生としてはやや見劣りするくらいの数字だった。この結果には少しだけ焦ったが、センター試験から二次試験までの1ヶ月間の猛勉強で、冒頭のとおり過去問で満点近くとれるレベルまで達した。

この経験をもとに、今回の記事では短期間で東大物理を得点源にする効率的な勉強方法をご紹介する。ただし、決して怪しい裏道ではなく、王道かつ正攻法である。ぼく自身が中高6年間塾には通わず独学で通したので、今回の記事は同じように独学で頑張る人を対象としている。

 

基本の考え方

物理の得意・不得意について

ある程度しっかり勉強すると、東大レベルの物理が得意か不得意かというのは、ほとんど数学の得意・不得意と一致してくる。

「習った法則を個別具体的な問題・事象に当てはめ」、

「ガリガリ計算を進める」

ことによって問題を解いていくという意味では、やっていることは数学も物理も大して変わらないからだ。というわけで、いま物理が得点源ではない人も、数学が得意な人は安心して勉強を進めればそのうち高得点が取れるようになる。

数学が苦手な人であっても、物理で出会う計算は決してそんなに複雑ではないので、速く正確に計算を進めていく能力さえあれば問題はない。

 

物理の分野について

物理には力学・電磁気学・熱力学・波動という4分野がある。原子は二次試験ではほとんど出ないし、センター試験では熱力学との選択なのでここでは無視ということで。

センター試験ではこの4分野からまんべんなく出題される。

二次試験では、力学と電磁気学で大問1つずつ、熱力学・波動のどちらかで大問1つという構成が多い。

必ずではないが、東大では第3問で熱力学と波動が毎年交互に出題されるという傾向がある。この辺の基本情報は、詳しい友達に聞くなり軽くネットで調べるなりしておくといい。

問題集の解き方

問題集を解くときには、

1. 1分考えても分からない問題は答えを見ること。

2. 計算問題はノートに書いて解くこと。

3. 分からなかった問題はすぐに参考書で徹底的に理解。その問題はチェックしておき、時間を空けてもう一度解く。チェックが無くなるまでこれを繰り返すこと。

この3点を守ってほしい。1.は時間短縮のためと挫折を防ぐため。2.は、分かったと思ってもいざ計算を進めてみると意外とつまずくことも多いため。自分の「分かった」をあまり過信してはいけない。

物理においては「理解する」ということがとにかく大事なので、解けなかった問題はすぐに参考書等で徹底的に理解することが大事。その場で理解できなくても、チェックしておいて先生に聞くなり後で戻ってくるなりして、なぜその答えになるかをしつこく追究するべき。化学は解法丸暗記でもいいが、物理は時間をかけてでも「理解」にこだわること。

なぜ理解が必要かというと、大学入試物理は覚えるべき範囲・分量が少ない分、あの手この手で視点を変えて出題されるからだ。したがっていかに深くまで対象を理解し、こうした揺さぶりに対応できるかが得点を左右することになる。

淡々と勉強できている友達を探す

周りを見回すと、勉強しているようで消しゴムを眺めていたり、参考書を漫然とパラパラめくっていたり、1時間勉強しただけで昼寝や気分転換をしてしまったりしている人が意外と多い。もしあなたが本気で目標を達成しようとするのなら、そうした人を見るのではなく、ただただ淡々と勉強し続けている人を見ること。そして、その人の勉強姿勢を真似ること。もしそういう人が周りにいない場合、あなた自身がお手本になること。

Be the change you want to see in the world. - Mahatma Gandhi

「世界に変化を求めるのなら、あなた自身がその変化となりなさい」

その他勉強全般に関すること

過去に書いた勉強のコツをご参照ください。

参考書・問題集

この章では、センター試験を経て東大二次試験物理に対応するための鉄板の書を紹介する。

参考書

物理のエッセンス

 

物理のエッセンス 力学・波動 物理のエッセンス 熱・電磁気・原子

定番の書。授業を一通り受けたあと(受ける前の独学でも使用可)、全体像のおさらいや問題の解き方の確認におすすめ。

よくまとまっていて、持っていて時間の節約になることはあっても無駄になることは絶対にない。よほどお金に困っているのでもない限り全員買うべきかと。参考書と問題集の間のような存在で、解説~例題の流れがスムーズ。

ただし、問題集として使うには微妙。その理由は3つある。1つめは解説がそこまで詳しくないこと。2つ目は単問ばかりで入試問題っぽくないこと。3つ目は東大受験生には問題が簡単すぎること。これらの理由から、問題集は別で用意して、この本は参考書として使うだけというのが贅沢だがいい。

「熱・電磁気」はそこまで評判は高くないが「力学・波動」の方は名著と名高い。高3の初め~夏休み前には仕上げておきたい。

漆原の物理

漆原の物理

上記の「物理のエッセンス」は、熱・電磁気・原子の評判はそれほどよくない。決して悪い本ではないのだけど、ちょっと凝縮しすぎていて、行間を読まないとあれだけではなかなか分かりづらいところもある。

そういうわけで物理のエッセンスが合わない人、物足りない人も中にはいるので、そういう人には「漆原の物理」をオススメする。化学でもオススメしたDOシリーズの書籍なので、化学でDOシリーズを使っている人は比較的馴染みやすいと思う。こちらにしてみたところで完璧ではないので、もやもやする人はエッセンスと両方使うか、努力で補うしかない。

問題集

物理は絶対的にオススメできる問題集があまりないのだが、その中でも信頼できる問題集を以下に紹介する。

重要問題集

実戦 物理重要問題集 (略称:重問「じゅうもん」)

問題数は155題。A問題139題、B問題16題。うち必解問題81題。

網羅性が高く良問も多く、物理の問題集への第一歩としては一番オススメできる。物理のエッセンスからのステップアップや、物理のエッセンスを読みながら解き進めるのにちょうどいい難易度。ただし解説がそれほど丁寧ではないので、独力で解決できるか、信頼して質問できる先生がいる人でないとやや使いづらい。

学校の授業があまりよくなくて、重要問題集さえあまりに難しい人は、良問の風から入るといい。

東大レベルならこれを一周やってから過去問演習でも良いが、できれば過去問演習までにもう一冊問題集をやるとスムーズ。

名問の森

 

名問の森物理 力学・熱・波動1 名問の森物理 波動2・電磁気・原子

問題数はそれぞれ64題と72題。

レベル的には重要問題集と同じなので、どちらか一方だけでいい。こちらの方が解説が詳しいので、独学で頼れる先生がいない人は、重要問題集を買う前に名問の森も書店でチラ見すべきだろう。問題集にはどうしても相性があるので、気に入った方を選ぶといい。

「物理のエッセンス」→「名問の森」の流れでは名問の森が難しいと感じる人もいるようだが、東大受験生はまずはこの流れを試してみるのが良い。もともと筆者の方はそういう位置付けでこの二冊を書いているので、少々難しく感じても解答を読みこんだりしてこなしていくのが効率的だと思われる。

※漢字は「名門の森」ではないので要注意

入試の核心

 

Z会が作成しているシリーズ。

名問の森と同じくらいの難易度なので、名問の森が合わない人はこれを使うと良い。

難問題の系統とその解き方

難問題の系統とその解き方 (略称:難系「なんけい」)

問題数は例題118題、演習問題177題。

東大レベルの受験生向けにオススメ、と言いたいところだが、なんとも言えない。考え方の基礎となる良問や骨のある問題が多く、正統な十分に良い問題集ではあるのだけど、装丁がやや古臭いのが玉に瑕。白壁の微瑕。

東大でも(理3でも)例題だけをしっかりやってから過去問に移れば十分。

解答が真横にあって使いづらいので、ぼくは全ページコピーして解答と切り離して使っていた。

標準問題精講

物理 標準問題精講 (略称:標問「ひょうもん」)

問題数は90題。

難問題の系統(難系)と難易度的に被っているので、どちらかを選んで徹底的にやり切るのがいい。難問題の系統と比べても遜色がないどころか難しめの問題が並んでいるようなレベルなので、「標準」の言葉には騙されないようにしよう。

新・物理入門

 

新・物理入門 新・物理入門問題演習

Amazonでは非常に評価が高い、微分による解法を提示する参考書と問題集。しかし東大物理で満点を取るにしても、微分による解法は不要。新たなことを学ぶ労力は大きいので、大学受験のためという観点では不要だろう。趣味で勉強する分にはかまわない。

25ヵ年

 

東大の物理25カ年

必須。東大には東大の、繰り返し繰り返し出題されている題材や考え方がある。これは本当に驚くべきことなのだが、2~3年周期で同内容または同じ切り口の出題が何度も何度も繰り返されているのだ。東大の入試問題を作っているのは東大の教授なのだが、やはり教授にとってみても、東大の作風を守るという意味でも、実際の過去問と近い切り口・視点で出題しておくのが安心なのだろう。

難問題の系統やそのレベルの問題集を何周まわしても東大の過去問で満点はなかなかとれるようにならない。東大の過去問を10年分くらい解くと東大だけが繰り返し扱う題材や思考法がわかってくるので、その段階で初めて満点近くが狙えるようになる。

なるべくたくさん入試問題を解きたい人は、「25ヵ年」は少し昔のものを買って、最近の過去問は全科目セットの過去問で入手するなどの工夫をするとより多くの過去問が確保できる。

「25ヵ年」は年度順ではなく分野別に問題がまとまっているのが、使い方によっては使いづらい。ぼくは常に自分の実力を測りたかったので、切り離して年度別に並べ替えて化学とセットにして本番さながらに時間を計って解いていた。(注:裏表で別の年度の問題が印刷されていたりするので、切り離して年度ごとに解くのは結構管理が大変)

過去問演習

過去問を解く時期

「これ」と決めた、難系レベルの問題集を2~3周解き終わってから取り組みたい。時期としては、二次試験の過去問は遅くとも冬休み前頃には開始したい。

それまでの間は、問題集で志望校の過去問を見かけた場合はなるべく避けるようにしたい。過去問演習をしながら常に自分の実力を測れる状態にしておくほうが自分の立ち位置が分かりやすいし、モチベーションアップにも繋がるので。

過去問演習と復習

過去問は解くだけで疲れてしまって、復習が疎かになってしまうという人も多いがそれは非常にもったいない。そうなってしまう一つの原因は、1年分の過去問を全教科まとめて解いてしまうことだ。たまにはそういうことをしてもいいが、基本的にはこれをするとエネルギーを使い果たして復習が疎かになってしまう。普段の過去問演習では復習の方が大事なので、復習のエネルギ-を残しておくためにも過去問は一教科だけで解いて、その都度復習するようにしたい。

150分のテストなら復習に1時間以上かかってしまうかもしれないが、新しい問題を次々に解くよりも確実に濃密な学びができる。ここをサボるのは一番やってはいけないことだ。

問題集から過去問の流れ

以下では、最短で東大物理で高得点から満点を狙うための、効率的な参考書や問題集の流れを紹介する。

 

  

エッセンス+重要問題集+難問題の系統+過去問

エッセンスは、常に傍らに置いておく。初めに通読してもいいが、授業で物理を習い終わっているのであれば、別に通読する必要はない。重要問題集を解きながら、辞書みたいに使えばいい。

重要問題集はさっさと終わらせ、難問題の系統もさらっとこなす。難問題の系統は夏休み明けくらいに1周できていればペース的には完璧。その後、東大の物理25ヵ年を徹底的にやり込む。

マイナーチェンジする点があるとすれば、以下のとおり。

  • 重要問題集の前に、良問の風をやってもいい。
  • 重要問題集の代わりに、名問の森をやってもいい。
  • 難問題の系統の代わりに、標準問題精講をやってもいい。

まとめ

物理はとっかかりが難しく、ある時期に一気に集中してやってしまわないといつまで経っても分からないということになり兼ねない。腹を括って本気で向き合ったときに初めて伸びるし、伸びるときは短期間で伸びる。

理科はやった分だけ絶対に伸びる教科でコスパは極めて高いので、早いうちに腹を括って主体的に取り組もう。

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東大化学で高得点・満点を狙う効率的勉強法と参考書総まとめ

物理を学習するとは?(補足)

この話は本来なら初めに持ってきたいくらい重要な話なのだが、あまりに抽象的で、最初に書いても読んでいただけないと思ったので最後に持ってきた。

「物理は暗記科目ではない」とよく言われる。暗記科目でなければ何なのだろう。応用、計算、そういった言葉が受験物理の世界ではよく聞かれる。それもある意味で正しいだろう。ぼくの考えでは、物理は「世界の単純化モデルを脳内に組み立てる」科目だ。

どういうことか。かつてガリレオ・ガリレイは「物体が自由落下する速度はその物体の質量に依存しない」ということを発見した。このことを証明するために、ガリレオはピサの斜塔から大小2つの鉛球を落とし、同時に着地する様子を示してみせたとされる。しかし実際のところ、これは2つとも鉛球だからほぼ同時に着地するのであって、たとえば片方が鳥の羽根なら鉛球の方が速く落ちるに決まっている。ガリレオの理論は、空気抵抗を無視するという前提に立って初めて成り立つのだ。

これを聞いて「ガリレオ、だめじゃん」と思う人は、物理の考え方がなっていないと言えるだろう。むしろ、こういうふうに世界を単純化して観察できるのがすごいことだし、物理の正統な考え方なのだ。ガリレオのすごさとは、摩擦力のない理論上の単純な世界を脳内に組み立て、その世界の中の計算上では、物体の落下速度は質量に影響されないはずだと考えたことだ。

物理という学問はこのように、そのままでは複雑すぎる現実世界の中から何かを切り捨てて世界を単純化することで、その単純な世界で成り立つ法則を順々に発見していくことで、複雑な現実世界を段階的に解き明かして発展してきたのだ。

大学受験物理はガリレオ~ニュートンの古典物理を習うので、「摩擦を無視」することはとても多い。そのこともあって、特に初学者の内は現実世界からの類推ではうまく題意の現象が想像できないことがよくある。だから、摩擦を無視した理論上の世界でどういったことが起こるのかを、きちんと力学の第○法則といった理論上の法則を元に脳内に組み立てて導けるようになる必要がある。「現実世界ではこうするとこうなるから~」という考え方は早々に諦めた方が良い。理論上の法則を元に、厳密に理論上の世界を積み上げていくのだ。

大げさだと思うかもしれないが、「物理が上達すること」=「世界の単純化モデルを脳内に組み立てられるようになること」だ。そしてそれは、習ってきた物理法則をしっかりとマスターし、目の前の問題で描かれている世界で働いている力学・電磁気学上の関係を漏らさず把握して積み上げることによってのみ可能となる。

力学の問題を解くにあたっては、「重力は?」「垂直抗力は?」「弾性力は?」「摩擦力は?」「浮力は?」「エネルギー保存は?」「運動量保存は?」と自分に問いかけて、目の前の世界で働いている力学関係を漏らさずに淡々と積み上げる作業が必要となる。そして力学の学習とは、この作業のスピードと正確性を高めるということだ。初めは一つ一つ確認するのに時間がかかると思うかも知れないが、この作業に慣れてくれば一瞬で目の前に題意の力学関係が浮かび上がるようになってくる。電磁気学や熱力学についても基本は同じで、習った法則を淡々と積み上げていくことで自然と問題は解けているというのが理想の状態だ。

物理の学習には、「淡々と」という言葉が似合う。学習した物理法則を、悩まず迷わず「淡々と」積み上げられるようになったとき、もう物理のテストで点を落とすことはなくなっているだろう。

意識は幻想なのか?自由意志の存在(とその否定)に対する、脳科学と哲学の論争のまとめ。

「自由意志」は存在する(ただし、ほんの0.2秒間だけ):研究結果|WIRED.jp

この記事が最近話題になっている。

自由意志は存在するのだろうか。簡単に言えば、「人間は、本当に自分の行動を自分の意志で自由に決定しているのだろうか」、という問いかけである。こういうことを考えたことが無い人は、自由意志はあるに決まってるんじゃないの、と思うかもしれないが、実は、そうではないかもしれないのである。

そもそも、上記記事の発端となるのは、1980年のリベットによる「運動準備電位」の研究である。リベットは、人間が腕を動かそうと意志し、腕が動くまでの過程を、電気的に測定した。その結果、

A「無意識的な電気信号(脳→筋肉)」→B「意識的な決定」→C「動作の開始」

という一連の流れについて、AとBの間に0.35秒、BとCの間に0.2秒の時間差があることが示された。リベットはこの実験により、BとCの間の0.2秒の間に、意識が運動を拒否する権利を持つと理解した。

このリベットの実験の第一の衝撃的な部分は、Bの意識的な決定の0.35秒も前に、無意識的に既に意思決定が成されているということだ。これによると、意識的に認識する前の無意識の段階で意思決定はなされていることになる。そして、自由意志が唯一もつ権利として、BとCの間の0.2秒間の拒否権が示されている。冒頭のWIREDの記事で紹介されている実験では、リベットによって示されたBとCの間の「意識の拒否権」の実在が確かめられている。

しかし、この脳科学的実験の解釈は難しいところがある。BとCの間で自由意志は拒否権を持っているとリベットは解釈をしたが、その拒否でさえ、すでに無意識が決定したものが遅れてBとCの間で表れただけという可能性が十分あるからだ。このように解釈した場合、「自由意志はやっぱり何にも決定権を持っていないよね」という結論になってしまう。

後者の解釈のしかたは、受動意識仮説という考え方を徹底した場合のものである。受動意識仮説とは、人間の意思決定は無意識的に全て行われていて、意識はそれをただただ合理的に解釈しているだけというもの。ぼく個人の意見としては、受動意識仮説はかなり直観に合う部分が多く、受動意識仮説を支持したいと考えている。

ここまでの部分は、自由意志論についての脳科学的アプローチである。

一方、自由意志というのは、生物学者よりも哲学者にとって非常に重大なテーマであり、哲学者によって長らく活発に議論されてきた。そして、哲学的論争の方がむしろ面白いとぼくは思っているので、今回の記事では、ぼくのできる範囲で、哲学における自由意志論について噛み砕いて紹介してみる。前提知識がなくても読めるよう極力配慮したので、付き合っていただければ幸いだ。

自由意志論とは

自由意志論とは、自由意志は存在するか否かを問う論議のこと。言い換えれば、人は自分の判断を主体的にコントールすることができるのか?という問いかけのことである。

自由意志は存在しない?

いまあなたはこの記事を読んでいる。この記事から離脱するかどうかは、あなたの自由だ。ふつうはそう考えるだろう。しかし、記事を読むか記事から離脱するかは、本当にあなたの意志で自由に選択できるのだろうか。あなたが記事を読み続けるかどうかは、自由意志によってではなく、物理的・化学的法則によって、あるいは自由意志を経ない無意識下の演算によって決定されているのではないだろうか。この問いは、何者でもないぼくのただの迷走的思考ではなくて、現に多くの哲学者を悩ませ続ける問題なのだ。

脳科学による挑戦状:「自由意志は存在しない」

冒頭で述べたことやその他の脳科学的な実験結果によって、「自由意志は存在しない」という立場は、ますます無視できない問題になってきている。

脳科学によると、脳はある一瞬における「内部的状態+外部の刺激」という入力に対し、ある計算を施して、その結果として、その次の瞬間における「内部的状態+外部環境への働きかけ」を出力している。脳をこのような計算機と考えれば、この計算は徹頭徹尾完成されており、自由意志がこの演算に入り込む余地はどこにもない。

これは、「メカニズム決定論」(戸田山和久「哲学入門」)と呼ばれる決定論の一つだ。決定論とは、「世界はその前の瞬間の世界の状態のみによって決定される」というもの。ここで紹介した脳科学者による決定論は、脳のメカニズムから見た決定論なので、「メカニズム決定論」と呼ばれている。

哲学者の奮闘:「自由意志の復活」

脳科学による挑戦状は、かなり強力だ。しかし、自由意志の存在を認めないとなってしまうと、人の行動は彼自身の意識の制御下にないということをも意味しかねず、それでは責任や懲罰といった概念が揺らぎ始め、社会の倫理が崩壊する可能性がある。それゆえ、哲学者はどのようにして自由意志を復活させるか、あるいは社会の倫理を保つかということに頭を悩ませてきた。私の考えでは、哲学者は自由意志を復活させることに未だに成功していない。

この記事では、哲学者たちの自由意志復活に向けた試みを紹介し、自分の考えについても軽く触れようと思う。

社会の倫理(責任)の復活

自由意志の前に、まずは、いかにして哲学者が責任という概念を復活させようと奮闘したかを書き記す。

出来事、反射、行為

まず、少し遠回りなようだが、出来事、反射(または反応)、行為という3分類について考えてみよう。次の5つの事象を、出来事、反射、行為に分けてみてほしい。

  1. 花びらが落ちること。
  2. アリが死ぬこと。
  3. アリが歩くこと。
  4. 人間のくしゃみ。
  5. 人間がジャンケンでグーを選ぶこと。

私の直観による分類では、1と2は出来事、3と4は反射、5は行為に分類される。それほどおかしな分類ではないと思う。もしかすると、3を行為と考える人も多いかもしれない。この相違はどこからくるのだろう。以下ではこの疑問に答えながら、私の考える出来事、反射、行為という3分類の境界線について説明する。

動物の神経系統の働きの有無

まずは、出来事と反射の違いについて。端的に言って、出来事と反射の違いというのは、その事象が動物の神経系統(主に脳)の働きを経て生まれたものかどうかによる。

花びらが落ちるのは、神経系統を経ていないので出来事。一方、アリが動くのは、何らかの刺激によってアリの神経系統から足に対して「動け」という命令が出されて動くのであり、こういうのを反射と呼ぶ。アリが死ぬのは、アリ自身の神経系統からの命令によるものではないので、反射ではなく出来事である。

意図の有無

次に、反射と行為の違いについて。これらの違いは、意図(=目的)の有無による。

くしゃみには目的はない*1一方、ジャンケンでグーを選ぶことには、「勝つ」という目的(=意図)がある。

先ほど、3の「アリが歩くこと」を私は反射に分類したが、これを行為と捉える人もいるかもしれないと述べた。この差異は、アリが歩くという事象に目的を見出すかどうかという違いである。アリが歩くという事象に、「餌を探し求めている」という目的を見い出せばこの事象は行為と捉えることができる。その一方で、餌を探し求めるのはアリ自身の目的ではなく、個体の生存と種の繁栄のために遺伝子にコーディングされたいわば外的な目的であると考えることもできる。この場合、アリ自身が目的(=意図)をもって歩いているとは言えず、アリが歩くのは反射ということになる。反射と行為の間に明確な境界線を設ける必要はなく、どの程度アニミズム的な解釈をするかによって、この線引きが変わってくるのは仕方ないかと思う。

哲学者の武器としての「意図」

このように考えると、疑いようもなく純粋な「行為」を行うことができるのは、人間だけだという気がしてくる。意図や目的を持って動作を行うのは人間の専売特許だと思われるからだ。

行為が意図の存在を前提とすることから、社会は行為者に対してある種の期待を持つようになる。意図が存在するゆえに、人間の行為は意図のもとで首尾一貫した、制御されたものとなる。行為が制御されているのであれば、社会的責任を行為者に認めてもいいと考えられる。そして、社会的責任が認められれば、それを基盤として懲罰についても議論することができる。

このように、行為の裏に意図の存在を認めることによって、人間の行為に社会の倫理というルールをあてがうことができるようになる。

社会の倫理は保たれた?

一部の哲学者は、人間が「意図」を持つ存在であることをとっかかりとして、このように社会の倫理を保とうとした。これは、意図が自由であるかどうかを追及しない限りはうまく機能するように思われる。

しかし、あとで述べるように、私には意志が自由でないのなら意図も自由でないように思われ、それゆえこの議論によって「責任」の概念が復活したというのは無理があるのではないかと思っている。

このことを述べる前に、次は哲学者の自由意志の復活にむけたアプローチを紹介していく。

意志とは

「意図」とは異なる概念として、「意志」というものがある。意図を「一連の動作全体の目的」とするのであれば、意志は、「ある生命体の個々の行動を決定する心の働き」と定義できる。この意志について、少し詳しく見てみよう。以下の3つの主張を見ていただきたい。

  1. 花びらには意志がない。
  2. アリには意志がない。
  3. 人間には意志がある。

1と3は、真偽については追々検討するが、一般的な直観では信じられていることだと思う。2については意見が分かれるかもしれない。アリには意志があるのだろうか。いったいどこに意志の境界線はあるのだろうか?

アリの意志

たとえば、アリが右に行くか左に行くかを決定するのは意志の働きなのだろうか。科学的には、アリはフェロモンの濃度勾配を触覚で感知して、自らの進行方向を決めている。右側の触覚の方がフェロモンを多く感知すれば右側にいくのだ。アリは、周りの物理的(または化学的)環境によって進行方向を決めているのである。

これを踏まえると、アリ自身が能動的に行き先を決めているという感じが乏しく、アリの行き先決定の裏に意志があると考えるのにはやや抵抗がある。

人間はどうだろう。たとえば人間のくしゃみは、ただ花粉やコショウが鼻に入ったための受動的な反射であり、そこに意志を読み取るのは難しい。ボウリングをしたり、人と話したり、ジャンケンでグーを出したりするのはどうだろうか。これについては、いかにも能動的に、主体的に決めている感じがして、これらの裏には意志が働いているような感じがする。

受動的か、能動的か

どうも、ある行動の裏に意志があると我々が感じるかどうかは、それが受動的か能動的かということにかかわっているように思われる。ここで、意志とは、「個々の行動を決定する能動的な心の働き」であると考えてみよう。

しかし、ここに一つの重大な問題が生じる。人は意志を能動的に生み出せるのだとしたら、その意志を生み出しているのはいったい何者なのだろうか?超自然的な存在を仮定しない限り、意志を生み出しているのは自分自身の意志以外にはありえないだろう。

これは決定的におかしい。意志を生み出すのが意志であるなら、その2番目の意志もまた、意志によって生み出されているはずである。これでは無限に意志が続いてしまう。ジャンケンでグーを出すために無限の意志の連鎖を仮定するのは馬鹿げている。

意志は能動的に生み出せない

ここまでの議論では、意志を能動的に生み出せると考えたために、意志の無限の連鎖を仮定する必要性が生じて、おかしなことになってしまった。であるならば、「意志は能動的に生み出せるものではない」と結論付けざるをえない。

能動的に生み出せないのであれば、意志は受動的に生起していると考えざるをえない。ジャンケンでグーを出すという心の動きは、受動的に生み出されたものだと考えざるをえないのだ。「心の動きが受動的に生み出される」というのがイマイチ直感的に分りにくいかもしれないが、過去のジャンケンの勝敗の経験や、「さいしょはグー」と言っているときの相手の手の形といった情報から、「グーを出そう」という心の働きないしニューロン発火が受動的に生成されていると言ってもいい。

「自由意志」の成立は厳しい

ここで述べた「意志が受動的に生成される」という考え方は、メカニズム決定論的な、脳を「ある入力に対して決まった演算を施し、おおむね一意的に出力を得る計算機」と捉える考え方とよく合致する。

そうであるならば、「意志」はメカニズム決定論の枠組みを免れ得ない。意志がメカニズム決定論の枠組みを出ないのであれば、「自由意志」の成立はかなり厳しいということになる。

物理学的な決定論

ここで、自由意志論においては必ずつきまとってくる、「物理学的な決定論」についても説明しておきたい。

物理学的な決定論とは、「この世は物理法則に支配されており、世界のある瞬間の全ての状態が分かれば、計算によって次の状態が導出できる。それゆえ世界は初めから決定している」という考え方だ。冒頭で紹介したメカニズム決定論を基礎づける考え方でもある。

古典力学的な決定論

ボールを投げたとする。そのボールは、放たれた瞬間の初速度と回転その他諸々の物理条件さえ決まっていれば、その後の運動は計算によって導出することができる。

人間の細胞を構成するタンパク質も、物理法則に従う物質だ。であるならば、その集合体である細胞、そしてその集合体である人間だって、物理法則に従うにきまっている。人間が物理法則に従うのならば、先ほどのボールと同じように、ある瞬間の人間とその周囲の状況が決まっていれば、その後のその人間の行動は計算によって導出できることになる。計算によって行動が導出できるのであれば、その人間には自分の行動を選択する余地はなかったのではないだろうか?

このように、古典力学的な決定論と自由意志は相容れないのだ。

ラプラスの悪魔

実際には、世界の全ての状態を把握できる人間なんていないので、こうしたことを考える場合には、全知全能の「ラプラスの悪魔」という存在を仮定する。宇宙の全ての原子の運動および位置が分かる存在として「ラプラスの悪魔」を仮定すると、彼には未来は完全に予測できるという考え方だ。

量子論は非決定的な世界観を持つ

実は、古典力学よりもミクロな世界を扱える理論として20世紀に表れた量子論は、非決定的な世界観をもっている。

量子力学にはさまざまな解釈が存在するが、いずれにしても世界があらかじめ一通りに決定しているとは考えず(=非決定的)、確率的なふるまいをすると考える。これは、人間の計算能力の問題でなくて、世界そのものがそういう性質を持っているのだと考えられているのだ。

量子論は非決定的だが、自由意志を救出しない

しかし、量子論の確率的な世界観は、自由意志を救出しないと考えられている。なぜなら、世界が偶然で決まるか必然で決まるかということは、自由意志が働いているかどうかとは別の話だからだ。

自分がグーを出すかチョキを出すかが量子論的な確率によって決まっているのだとすれば、それは自分の自由意志によって決めたとはいえないのではないか。たとえ非決定的であるといっても、量子論的な確率は、自由意志の概念とは程遠いのだ。

意図は自由なのか?

ここまでで、「自由意志」の成立は厳しそうだということが分かっていただけたと思う。

それでは、初めに議論した「意図」についてはどうだろう。意図は自由なのだろうか?残念ながら、意志は自由ではないのに、意図は自由であるとする正当な理由を考えるのは至難の業だといえる。

意図は、比較的長い時間保持され、その間の意志を形作るものであると捉えることができる。それゆえ、脳の演算を仮定する際は、意志を出力するための入力の側として考えることが多く、そのためなんだか「もともとそこに存在していた」ような気がしてくる。しかし、そのことは「意図が脳の演算の外側に初めから存在する」ことを意味しない。意図だって、何らかの形で形成されたものに違いないのであり、そうであるならば脳の計算システムの呪縛を免れ得ないのだ。

このように考えると、自由意図を想定することも厳しいと考えられる。であるならば、自由ではない意図が制御した行為に対して、人はどれほどの責任を追うべきなのだろうか。

意図の存在を肯定したことで、社会の倫理は保たれたように見えたが、決して盤石とはいえないのである。

まとめ

自由意志論は非常に難しい問題で、本を読んだり自分の頭で考えたりしても、だんだん何がなんだかよくわからなくなってくる。

おそらく、予備知識無しでこの記事を読んで、すぐに書いてあることが全て分かる人はいないと思う。しかし、少しでも面白いと興味を持ってもらえ、たびたび振り返ってこのことを考えるようにしてもらえたなら、いずれこの問題の奥深さに気付いていただけると思う。

もし少しでも興味を持ってもらえたなら、

著:野矢茂樹

哲学の謎

この本の8章と9章がドンピシャでこの問題を扱っている。オムニバス形式になっているので、8章と9章だけを読んでも分かるようになっている。ぜひ手にとって本物の哲学者の言葉遣いでこの問題について読んでみてほしい。

*1:生物としては、異物を排除する目的があろうが、それは意識的な目的ではないため、本記事で扱うような話ではない。

【難関大学】大学受験物理で高得点を狙う効率的勉強法と参考書総まとめ(MARCH以上入試攻略)

初めに、こんな記事を書くぼくの実績を紹介する。入試直前期に解いた東大理科(物理+化学)過去問の直近10年分の平均点は120点満点中117点だった。割合でいうと9割7分。所要時間は150分中80分くらいだった。もちろんその過去問を解くのは二周目ではない。そういうわけで、国内の同学年では指折りのレベルで受験理科をマスターしていた自信がある。

そんなぼくも、もともと理科は別に好きでも得意でもなくて、秋の東大模試では物理+化学で120点満点中40点くらいという平凡な数字だった。結果を見たときは少し焦ったが、センター試験から二次試験までの1ヶ月間の猛勉強で、冒頭のとおり過去問で満点近くとれるレベルまで達することができた。

この経験をもとに、今回の記事では短期間で物理を得点源にする効率的な勉強方法をご紹介する。ただし、決して怪しい裏道ではなく、王道かつ正攻法である。ぼく自身が中高6年間塾には通わず独学で通したので、今回の記事は同じように独学で頑張る人を対象としている。

注:同じやり方をすれば誰でも高得点がとれるようになるわけではないという当然の事実にはご注意いただきたい。勉強にはコツがあり、そのコツを体得できているかどうかで効率がぜんぜん違う。ぼくが実践していた勉強法については、こちらの勉強のコツの記事をご参照ください。

 

基本の考え方

物理・化学・生物の選択について

多くの理系受験生は「物理・化学」か「化学・生物」という選択をする。要するに物理か生物かを悩むわけだが、単純に入試のことだけを考えれば、暗記が好きなら生物、考えるのが好きなら物理という考え方で良いと思う。

物理では覚えることが少ないというのは本当だけど、その分悩まないと理解できないことが多い。分からないことに向き合って考え続けて、「ああ、そういうことか!」と分かったときの快感が好きなタイプが物理に向いていると言える。

え?どっちも好きじゃないって?…苦しいけど頑張ろう!

物理の分野について

物理には力学・電磁気学・熱力学・波動という4分野がある。原子は二次試験ではほとんど出ないし、センター試験では熱力学との選択なのでここでは無視ということで。

センター試験ではこの4分野からまんべんなく出題される。

二次試験では、力学と電磁気学で大問1つずつ、熱力学・波動のどちらかで大問1つという構成が多い。東大では第3問で熱力学と波動が毎年交互に出題されるとか、京大は熱力学が多いとかそういう大学ごとの傾向があったりするので、詳しい友達に聞くなり軽くネットで調べるなりしておくといい。

問題集の解き方

問題集を解くときには、

1. 1分考えても分からない問題は答えを見ること。

2. 計算問題はノートに書いて解くこと。

3. 分からなかった問題はすぐに参考書で徹底的に理解。また、その問題にチェックしておき、時間を空けてもう一度解く。チェックが無くなるまでこれを繰り返すこと。

この3点を守ってほしい。1.は時間短縮のためと挫折を防ぐため。2.は、分かったと思った問題でもいざ計算を進めてみると思ったとおりに行かずつまずくことが多いため。自分の「分かった」をあまり信用してはいけない。

物理においては「理解する」ということがとにかく大事なので、解けなかった問題はすぐに参考書等で徹底的に理解することが大事。その場で理解できなくても、チェックしておいて先生に聞くなり後で戻ってくるなりして、なぜその答えになるかをしつこく追究するべき。化学は解法丸暗記でもいいが、物理は時間をかけてでも「理解」にこだわること。

なぜ理解が必要かというと、入試問題は常に生き物のようにうごめき移り変わり、視点を変えて出題されるからだ。物理においては特に、覚える分量が少ない分、あの手この手で出題の視点を変えてくる。したがっていかに深くまで対象を理解し、これに対応できるかが得点を左右することになる。

淡々と勉強できている友達を探す

周りを見回すと、勉強しているようで消しゴムを眺めていたり参考書を漫然とパラパラめくっていたり、1時間勉強しただけで昼寝や気分転換をしてしまったりしている人が意外と多い。もしあなたが本気で成果を出そうとするのなら、そうした人を見るのではなく、ただただ淡々と勉強し続けている人を見ること。そして、その人の勉強姿勢を真似ること。もしそういう人が周りにいない場合、あなた自身がお手本になること。

Be the change you want to see in the world. - Mahatma Gandhi

「世界に変化を求めるのなら、あなた自身がその変化となりなさい」

その他勉強全般に関すること

過去に書いた勉強のコツをご参照ください。

参考書・問題集(センター・MARCHレベル)

この章では、センター試験~MARCHレベル受験生の鉄板の書を紹介する。

参考書

物理のエッセンス

 

物理のエッセンス 力学・波動 物理のエッセンス 熱・電磁気・原子

定番の書。よくまとまっていて、持っていて時間の節約になることはあっても無駄になることは絶対にないので、よほどお金に困っているのでもない限り全員買うべきかと。参考書と問題集の間のような存在で、解説~例題の流れがスムーズ。

ただし、問題集として使うには微妙。その理由は2つあって、1つめは解説がそこまで詳しくないこと。2つ目は単問ばかりで入試問題っぽくないこと。これらの理由から、問題集は別で用意して、この本は参考書として使うだけというのが贅沢だがいい。いずれにせよこれ一冊でMARCH以上を狙うのは厳しいので、問題集はこの他に必要。

「熱・電磁気」はそこまで評判は高くないが「力学・波動」の方は名著と名高い。高3の初め~夏休み前には仕上げておきたい。

漆原の物理

漆原の物理

上記の「物理のエッセンス」は、熱・電磁気・原子の評判はそれほどよくない。決して悪い本ではないのだけど、ちょっと凝縮しすぎていて、あれだけでは分かりづらいところもあるかなという印象。

そういうわけで物理のエッセンスが合わない人、物足りない人も中にはいるので、そういう人には「漆原の物理」をオススメする。化学でもオススメしたDOシリーズの書籍なので、化学でDOシリーズを使っている人は比較的馴染みやすいと思う。こちらにしてみたところで完璧ではないので、もやもやする人はエッセンスと両方使うか、努力で補うしかない。そう、物理の参考書にはまだ「本物の定番」は無いのだ。

問題集

良問の風

良問の風

問題数は148題。

「エッセンス」-「良問の風」-「名問の森」3部作の次男坊。「エッセンス」は参考書、「良問の風」「名問の森」は問題集と理解されることが多い。エッセンスより内容的に難しいというわけではなくて、エッセンスレベルで、より入試問題らしい実践演習ができるように作られている。エッセンスを問題集として使い、例題をきちんと解ききった人には不要と思われる。あくまでエッセンスを参考書として読み、ふさわしいレベルの問題集が欲しいという贅沢な人用。

レベル的には「マーチに十分対応」といったところだが、高得点が狙えるかというと微妙。マーチで高得点を狙うなら、名問の森か重要問題集もある程度やってから過去問演習をやるといい。問題集を良問の風だけで済ませるのなら、過去問演習を徹底的にしっかりとやる必要がある。

また、筆者の方は「エッセンス」と「名問の森」で完成と思っていたところ、「名問の森」は難しすぎるという声を受けてこの本を書いたそうで、「名問の森」に比べると情熱のかけ具合がやや劣るとの声もあり。

東大レベル受験生にはこの本は不要。エッセンスが終わったらもっと難しい問題集にジャンプアップしないと間に合わない。

理系標準問題集

理系標準問題集 物理

問題数は基本問題が131題、実戦問題が39題。

何らかの理由で良問の風が合わない人に。よくまとまっていて解説も非常に丁寧な良書なのだけど、名前にインパクトが無いからかイマイチ目立たない。難易度的にも問題数的にも良問の風と被ってしまっていて不遇の存在。解説は丁寧で信頼できる良書なのだけど。

基礎問題精講

物理 基礎問題精講

問題数は105題。

同シリーズの化学は非常に評判も使い勝手も良いのだけど、物理の方は他の問題集に比べて明確な強みを打ち出せていない印象。良問の風や理系標準問題集と難易度的にも被っているので、特別に気に入る要素がなければ使う理由はないかと思う。気になる人はAmazonの「なか見」(Amazonの商品ページで商品画像クリック)で見られるので、見てみるといい。

問題集(旧帝大レベル~最難関大レベル)

物理は絶対的にオススメできる問題集があまりなく、どのレベルの受験生も少し不便を感じながら勉強している印象。その中でも信頼できる問題集を以下に紹介する。

重要問題集

実戦 物理重要問題集 (略称:重問「じゅうもん」)

問題数は155題。A問題139題、B問題16題。うち必解問題81題。

網羅性が高く良問も多く、物理の問題集の中では一番オススメできる。物理のエッセンスからのステップアップや、物理のエッセンスを読みながら解き進めるのにちょうどいい難易度。ただし解説がそれほど丁寧ではないので、独力で解決できるか、信頼して質問できる先生がいる人でないとやや使いづらい。

マーチレベルの人はA問題だけとか、時間が無い人は必解問題だけとかいろいろな使い方ができる。旧帝大以上を受験するなら基本的には全部解くべきだろう。旧帝大レベルならこれ一冊を徹底的にやって過去問演習、東大レベルならこれを一周やってから過去問演習でも良いが、できれば過去問演習までにもう一冊問題集をやるとスムーズ。

名問の森

 

名問の森物理 力学・熱・波動1 名問の森物理 波動2・電磁気・原子

問題数はそれぞれ64題と72題。

レベル的には重要問題集と同じなので、どちらか一方だけでいい。こちらの方が解説が詳しいので、独学で頼れる先生がいない人は、重要問題集を買う前に名問の森も書店でチラ見すべきだろう。問題集にはどうしても相性があるので、気に入った方を選ぶといい。

「物理のエッセンス」→「名問の森」の流れでは名問の森が難しいと感じる人もいるようだが、難関大受験生はまずはこの流れを試してみるのが良い。もともと筆者の方はそういう位置付けでこの二冊を書いているので、少々難しく感じても解答を読みこんだりしてこなしていくのが効率的だと思われる。

※漢字は「名門の森」ではないので要注意

入試の核心

Z会が作成しているシリーズ。

名問の森と同じくらいの難易度なので、名問の森が合わない人はこれを使うと良い。

難問題の系統とその解き方

難問題の系統とその解き方 (略称:難系「なんけい」)

問題数は例題118題、演習問題177題。

東大レベルの受験生向けにオススメ、と言いたいところだが、なんとも言えない。考え方の基礎となる良問や骨のある問題が多く、正統な良い問題集ではあるのだけど、装丁も含めてやや古臭い。東大でも(理3でも)例題だけやってから過去問に移れば十分。

解答が真横にあって使いづらいのでぼくは全ページコピーして使っていたが、その手間がなんとももったいない。誰にでもオススメできる問題集ではないので、「みんなやってるから難系をやらないと不安…!」という理由だけで手を出すのはオススメしない。特に今は次に紹介する標準問題精講もあるので、書店で見比べてどちらをやるか決めていただきたい。

標準問題精講

物理 標準問題精講 (略称:標問「ひょうもん」)

問題数は90題。

難問題の系統(難系)と難易度的に被っているので、どちらかを選んで徹底的にやり切るのがいい。難問題の系統と比べても遜色がないどころか難しめの問題が並んでいるようなレベルなので、「標準」の言葉には騙されないようにしよう。

新・物理入門

 

新・物理入門 新・物理入門問題演習

Amazonでは非常に評価が高い、微分による解法を提示する参考書と問題集。しかし東大物理で満点を取るにしても、微分による解法は不要。新たなことを学ぶ労力は大きいので、大学受験のためという観点では不要だろう。趣味で勉強する分にはかまわない。

25ヵ年

 

 

東大の物理25カ年 京大の物理25カ年

必須。東大には東大の、繰り返し繰り返し出題されている題材や考え方がある。これは本当に驚くべきことなのだが、2~3年周期で同内容の出題が何度も何度も繰り返されているのだ。東大の入試問題を作っているのは東大の教授なのだが、やはり教授にとってみても、東大の作風を守るという意味でも過去問を分析して似たような切り口で出題するのが安心なのだろう。

難問題の系統やそのレベルの問題集を何周まわしても東大の過去問で満点はなかなかとれるようにならない。東大の過去問を10年分くらい解くと東大だけが繰り返し扱う題材や思考法がわかってくるので、その段階で初めて満点近くが狙えるようになる。京大入試に向けた勉強はしたことがないので分からないが、おそらく同じような理由で京大受験でも過去問研究は必須なはず。

なるべくたくさん入試問題を解きたい人は、「25ヵ年」は少し昔のものを買って、最近の過去問は全科目セットの過去問で入手するなどの工夫をするとより多くの過去問が確保できる。

「25ヵ年」は年度順ではなく分野別に問題がまとまっている点が評価に迷うところ。ぼくは常に自分の実力を測りたかったので、切り離して年度別に並べ替えて化学とセットにして本番さながらに時間を計って解いていた。(注:裏表で別の年度の問題が印刷されていたりするので、切り離して年度ごとに解くのは結構管理が大変)

過去問演習

過去問を解く時期

「これ」と決めた問題集を3周解き終わってから取り組みたい。時期としては、遅くともセンター試験の過去問であれば夏休み~秋頃開始。二次試験の過去問は冬休み前頃には開始する。ちなみにぼくが過去問を解き始めたのは2月に入ってからだったが、これは英数の過去問を最後まで解かなかったため。普通に全教科の過去問を解く場合は2月からでは解ききれないのでオススメしない。

それまでの間は、問題集で志望校の過去問を見かけた場合はなるべく避けるようにしたい。過去問演習をしながら常に自分の実力を測れる状態にしておくほうが自分の立ち位置が分かりやすいし、モチベーションアップにも繋がるので。

過去問演習と復習

過去問は解くだけで疲れてしまって、復習が疎かになってしまうという人も多いがそれは非常にもったいない。そうなってしまう一つの原因は、1年分の過去問を全教科まとめて解いてしまうことだ。たまにはそういうことをしてもいいが、基本的にはこれをするとエネルギーを使い果たして復習が疎かになってしまう。普段の過去問演習では復習の方が大事なので、復習のエネルギ-を残しておくためにも過去問は一教科だけで解いて、その都度復習するようにしたい。

150分のテストなら復習に1時間以上かかってしまうかもしれないが、新しい問題を次々に解くよりも確実に濃密な学びができる。ここをサボるのは一番やってはいけないことだ。

問題集から過去問の流れ

以下では、最短で高得点を狙う効率的な参考書・問題集~過去問の流れを紹介する。これは最低限の流れなので、実際にはプラス1~2冊気になる部分を補強する形で他の問題集も使うのが普通だろう。

センター高得点レベル

エッセンス+センター対策問題集&過去問

センター試験レベルならエッセンスもそこまで必須というわけではない。センター対策の過去問や問題集は充実してるので、そういうのをガリガリやって、分からない部分を信頼できる参考書で解決するスタイル。あまり普通の問題集をやる必要はない。

MARCH高得点レベル

 

エッセンス+良問の風+過去問

エッセンスを夏休み前に読み終わって、夏休み中には問題集を1周解ききるのが理想。良問の風で物足りない部分は重要問題集か名問の森で補う方針で。

旧帝大高得点レベル

 

エッセンス+重要問題集(or名問の森)+過去問

夏休み中には重要問題集を1~2周やる。好みや学習環境によって名問の森の方がいい場合もある。

最難関大高得点レベル

  

エッセンス+重要問題集+難問題の系統+過去問

重要問題集はさっさと終わらせ、難問題の系統もさらっとこなす。難問題の系統は夏休み明けくらいに1周できていればペース的には完璧。その後東大・京大受験生は25ヵ年を徹底的にやり込む。

まとめ

物理はとっかかりが難しく、ある時期に一気に集中してやってしまわないといつまで経っても分からないままというパターンがよくある教科。どこかのタイミングで腹を括って本気で向き合ったときに初めて伸びるし、伸びるときは短期間で伸びるというイメージ。

理科はやった分だけ絶対に伸びる教科でコスパは極めて高いので、早いうちに腹を括って主体的に取り組もう。

化学の勉強法・参考書のまとめもあわせてご参照ください。

物理を学習するとは?(補足)

この話は本来なら初めに持ってきたいくらい重要な話なのだが、あまりに抽象的で、最初に書いても読んでいただけないと思ったので最後に持ってきた。

「物理は暗記科目ではない」とよく言われる。暗記科目でなければ何なのだろう。応用、計算、そういった言葉が受験物理の世界ではよく聞かれる。それもある意味で正しいだろう。ぼくの考えでは、物理は「世界の単純化モデルを脳内に組み立てる」科目だ。

どういうことか。かつてガリレオ・ガリレイは「物体が自由落下する速度はその物体の質量に依存しない」ということを発見した。このことを証明するために、ガリレオはピサの斜塔から大小2つの鉛球を落とし、同時に着地する様子を示してみせたとされる。しかし実際のところ、これは2つとも鉛球だからほぼ同時に着地するのであって、たとえば片方が鳥の羽根なら鉛球の方が速く落ちるに決まっている。ガリレオの理論は、空気抵抗を無視するという前提に立って初めて成り立つのだ。

これを聞いて「ガリレオだめじゃん」と思う人は、物理の考え方がなっていないと言えるだろう。むしろ、こういうふうに世界を単純化して観察できるのがすごいことだし、物理の正統な考え方なのだ。ガリレオのすごさとは、摩擦力のない理論上の単純な世界を脳内に組み立て、その世界の中の計算上では、物体の落下速度は質量に影響されないはずだと考えたことだ。

物理という学問はこのように、そのままでは複雑すぎる現実世界の中から何かを切り捨てて世界を単純化することで、その単純な世界で成り立つ法則を順々に発見していくことで、複雑な現実世界を段階的に解き明かして発展してきたのだ。

大学受験物理はガリレオ~ニュートンの古典物理を習うので、「摩擦を無視」することはとても多い。そのこともあって、特に初学者の内は現実世界からの類推ではうまく題意の現象が想像できないことがよくある。だから、摩擦を無視した理論上の世界でどういったことが起こるのかを、きちんと力学の第○法則といった理論上の法則を元に脳内に組み立てて導けるようになる必要がある。「現実世界ではこうするとこうなるから~」という考え方は早々に諦めた方が良い。理論上の法則を元に、厳密に理論上の世界を積み上げていくのだ。

大げさだと思うかもしれないが、「物理が上達すること」=「世界の単純化モデルを脳内に組み立てられるようになること」だ。そしてそれは、習ってきた物理法則をしっかりとマスターし、目の前の問題で描かれている世界で働いている力学・電磁気学上の関係を漏らさず把握して積み上げることによってのみ可能となる。

力学の問題を解くにあたっては、「重力は?」「垂直抗力は?」「弾性力は?」「摩擦力は?」「浮力は?」「エネルギー保存は?」「運動量保存は?」と自分に問いかけて、目の前の世界で働いている力学関係を漏らさずに淡々と積み上げる作業が必要となる。そして力学の学習とは、この作業のスピードと正確性を高めるということだ。初めは一つ一つ確認するのに時間がかかると思うかも知れないが、この作業に慣れてくれば一瞬で目の前に題意の力学関係が浮かび上がるようになってくる。電磁気学や熱力学についても基本は同じで、習った法則を淡々と積み上げていくことで自然と問題は解けているというのが理想の状態だ。

物理の学習には、「淡々と」という言葉が似合う。学習した物理法則を、悩まず迷わず「淡々と」積み上げられるようになったとき、もう物理のテストで点を落とすことはなくなっているだろう。

【難関大学】大学受験化学で高得点を狙う効率的勉強法と参考書総まとめ(MARCH以上入試攻略)

まずは、こんなタイトルで記事を書くぼくの経験について。入試直前期に解いた東大理科(物理+化学)過去問の直近10年分の平均点は120点満点中117点だった。割合でいうなら9割7分だ。解き終えるまでの所要時間は150分中80分くらい。もちろんそれらの過去問を解くのは二周目ではない。日本一とは言わないまでも、国内の同学年で片手に入るくらいには受験理科をマスターしていた自信がある。

そんなぼくも、もともと理科は好きでも得意でもなくて、秋の東大模試では物理+化学で120点満点中40点くらいという平凡な数字だった。結果を見たときはやや焦ったが、センター試験から二次試験までの1ヶ月間の猛勉強で、冒頭のとおり過去問で満点近くとれるレベルまで達することができた。

この経験をもとに、今回の記事では短期間で化学を得点源にする効率的な勉強方法をご紹介する。ただし、決して怪しい裏道ではなく、王道かつ正攻法である。ぼく自身が中高6年間塾には通わず独学で通したので、今回の記事は同じように独学で頑張る人を対象としている。

注:同じやり方をすれば誰でも高得点がとれるようになるわけではないという当然の事実にはご注意いただきたい。勉強にはコツがあり、そのコツを体得できているかどうかで効率がぜんぜん違う。ぼくが実践していた勉強法については、こちらの勉強のコツの記事をご参照ください。

 

基本の考え方

理論+無機 vs. 有機

「化学は理論・無機・有機の3分野に分かれる」とよく言われる。ここで、「理論」とは物質量molや熱化学方程式に代表される計算分野、「無機」とは物質の色や水溶性などの物性(物質の性質)に代表される暗記分野。「有機」とは有機物の構造決定を主とする分野のことを指す。

しかし、ハイレベルの問題では理論と無機はほとんど融合してしまっている。理論の問題に物性の知識が問われたり、無機の問題にゴリゴリの計算が出たりということはよくあるのだ。一方、有機分野は本当に独立した一分野という印象を与える。初めから化学は「理論+無機」と「有機」の2つに分かれる、という理解でいた方が戸惑いが少なくて良いかもしれない。

付箋で覚える

化学については特に、ワンポイントで覚える知識が非常に多い。たとえば

注:このメモを書いた頃は東大の過去問で60点中45点くらいとれていた。高3の夏休み頃でこのメモの内容が分からなくても不安になる必要はない。

これはぼくの受験生時代の(汚い)メモで申し訳ないが、化学はこういう一文のメモ書き程度の分量で覚えないといけないことが山のようにある。これを全部専用のノートに書き連ねてもいいのだけど、ぼくのオススメはPost-it(特大)を使うこと。

Post-it 長方形 75x127mm

使い方は、

1. 覚えるべきことが出てきたらPost-itに書く。

2. それが出てきた問題集か参考書の表に貼る。

3. 1日経ったらその付箋をノートへ移動する。

4. 定期的に付箋がたまったノートも見直す。

2で問題集か参考書の表に貼ることで、その日のうちに3回くらいその付箋を見ることになるので、自然な反復学習ができる 。 直接ノートに書き込んでしまうよりも初日の復習回数が自然と多くなるのが良いポイントだ。

問題集の解き方

問題集を解くときには、

1. 1分考えても分からない問題は答えを見ること。

2. 計算問題は極力ノートに書いて解くこと。

3. 分からなかった問題にチェックする。解けたけれど悩んだ問題にもチェックする。チェックが消えるまで2周、3周と解くこと。

この3点を守ってほしい。1.は時間短縮のためと挫折を防ぐため。2.は、分かったと思った問題でもいざ計算を進めてみると思ったとおりに行かずつまずくことが多いため。自分の「分かった」をあまり信用してはいけない。

3を守ると、1周目は7割近い問題にチェックがつくと思われる。だがそれでいい。2周目で25%、3周目で5%以下になっている。2周目3周目は解くペースも上がっているので、「何周も解く」という言葉の印象の割に、そこまで膨大な時間がかかるわけではない。

反復学習をシステム化する

人間の記憶と忘却のメカニズムについての研究が進んでいる。それによると、効果的な復習は、学習から10分後、1日後、1週間後、1ヶ月後…と周期を伸ばしながら繰り返していくことが大事だとされている。そうはいっても、学習したこと全てについて自分で周期を管理しながら復習するのは労力ばかりが大きい。おすすめは、自然に反復学習ができるシステムを作っておくこと。

これについては、上で紹介した「付箋で覚える」と「何周も解く」というのが良い反復学習のシステムとなる。この2つを実践することで、適度な間隔を保ちながら自然な反復学習ができるようになっている。

淡々と勉強できている友達を探す

周りを見回すと、勉強しているようで消しゴムを眺めていたり参考書を漫然とパラパラめくっていたり、1時間勉強しただけで昼寝や気分転換をしてしまったりしている人が意外と多い。もしあなたが本気で成果を出そうとするのなら、そうした人を見るのではなく、ただただ淡々と勉強し続けている人を見ること。そして、その人の勉強姿勢を真似ること。もしそういう人が周りにいない場合、あなた自身がお手本になること。

Be the change you want to see in the world. - Mahatma Gandhi

「世界に変化を求めるのなら、あなた自身がその変化となりなさい」

その他勉強全般に関すること

過去に書いた勉強のコツについてをご参照ください。

参考書・問題集(センター・MARCHレベル)

この章では、センター試験~MARCHレベル受験生の鉄板の書を紹介する。

参考書

DOシリーズ

  

鎌田の理論化学の講義 福間の無機化学の講義 鎌田の有機化学の講義

学校の授業+α~センター試験のレベル感のシリーズ。評判はかなり良い。MARCHレベルまでの受験生が問題集を解く際に傍らに置いておくにはかなり使いやすい定番の書。最難関大レベルを受験予定の高1~高2生で、学校の化学の先生がハズレだなあと感じている人にもオススメ。特に理論化学は先生の教え方によって理解度に差が出やすいので、一冊信用できる参考書があると安心。

このシリーズはどれも信頼できるが、「福間の無機化学」は特にしっかりと内容が整理されている。無機化学は学校で習っただけでは「ごちゃごちゃしてなんだかよくわからんな」という印象を受けがちなので、きっちり整理してくれている参考書を手元においてパラパラめくっていると役に立つことが多い。Amazonで「なか見」で内容が見られるので、気になる人はチェックしてみると良い。

問題集

基礎問題精講

化学 基礎問題精講 (略称:基礎問)

問題数が102題と少なめな分、解説が圧倒的に詳しい。物理でいう「物理のエッセンス」のように、問題数は少ないが基礎を独学で習得するにはピッタリ。信頼して質問できる先生がいない場合には、解説が詳しいこれが一番いい。基礎といっても、センターレベルやそれほど難しくない二次試験にはこれで十分対応可能。

最難関大受験生にとっては、後で必ずやることになる「化学の新演習」と難易度的に被りが少ないので「化学の新演習」に入る前の一冊としておすすめできる。これをやったあとすぐに化学の新演習を解こうとするとかなり難しいと感じるかもしれないが、そこは根性で乗り切る。あまり段階を踏んできちきち勉強するばかりが良いとも思わないので。Amazonで「なか見」で内容が見られるので、気になる人はチェックしてみると良い。

標準問題集

理系標準問題集 化学 (略称:標問)

問題数は202題と、多すぎも少なすぎもせずベストな量。また解説も詳しく、MARCHレベルで過去問演習に繋げるまでの効率重視の問題集としておすすめ。後で紹介する化学の新標準演習や重要問題集と難易度的にはかなり被っているので、自分のレベルに合わせてどれか一つに絞って徹底的にやることをオススメする。

標問と略される問題集はあと一つ(化学 標準問題精講)あってややこしいので略称には要注意。

問題集(MARCH高得点~旧帝大レベル)

化学の新標準演習

 

化学の新標準演習 (略称:新標準)

左が新課程の方。右の「化学Ⅰ・Ⅱの新標準演習」は旧課程。といっても、化学においては新・旧課程は名ばかりでほとんど入試問題の内容に変更はない。

右の旧課程版でさえ359題と問題数が非常に多かったが、左の新課程版では560題と圧倒的な問題数。ただしこの増量分は「センターチェック」というセンター形式の選択式の問題がほとんどのため、うまく使える人には良い改変だ。解説も200ページ超えで非常に詳しい。これ一冊を3周やり込めば、MARCH高得点・旧帝大レベルに問題なく対応できる。あとは過去問演習あるのみ。これを使う場合には参考書として後で紹介する同著者の「化学の新研究」を用意したい。

最難関大受験生が使う場合は、「化学の新演習」をやる前のステップとして利用することとなる。したがってこの問題集に手を出す場合はあまり完璧に何周もしようと試みず、高2~高3の一学期の間にさらっと終わらせておくこと。これをキッチリ終わらせてから「化学の新演習」も3周解くとなると入試にはとても間に合わない。

重要問題集

実戦 化学重要問題集 (略称:重問)

問題数は275問。国公立大学(旧帝大含む)受験には鉄板の問題集。良問揃いで問題数も275問としっかりしていて網羅性が高い。MARCH~旧帝大レベルまでであれば、この問題集を全問すらすら解けるまで3周やればかなりの高得点が狙える。

「化学の新標準演習」と同じく、最難関大受験生が使う場合は、「化学の新演習」をやる前のステップとして利用することとなる。気になる問題150~200問程度でもいいので、高2から高3の夏休み前までには一周は終わらせておきたい。骨のある問題も多く、最難関大の受験勉強への橋渡しとしては一番おすすめできる問題集。一部の良問は、「化学の新演習」を始めてからもたびたび戻ってきて解きたいくらいだ。

ただし解説がそれほど丁寧ではないので、分からない部分を「化学の新研究」で独学で解決できる能力があるか、信頼できる先生がいる場合でないと使いづらい。

標準問題精講

化学 標準問題精講 (略称:標問)

問題数は102題。「標準」とあるが難易度は高めで、重要問題集のB問題レベルの問題が集められている。厳選された良問が多く、効率重視で旧帝大高得点レベルを狙う人にオススメ。旧帝大や最難関大を目指す人で、早めに過去問演習に移りたい人が使うのにちょうどいい。

最難関大で高得点を狙うにはこの問題集だけではやや不足する。

参考書・問題集(最難関大レベル)

最難関大レベルはここからが本番。脳から汁が溢れ出るような努力を続けて道を切り開く。

参考書

化学の新研究

化学の新研究 (略称:新研究)

必須。これ無しで化学を勉強するのは、辞書無しで英語を勉強するのと同じ。一応参考書のくくりだが、辞書のような感覚で使うのがいい。これを初めから読み進めようとするのは無謀。問題集を解く際に傍らに置いておいて、問題集の解答解説を読んでも解決できなかった場合のみこの本を開いて解説を探すというスタイル。このように使用条件を限っても、入試までの間に相当回数本書を開くこととなる。

 

このように使う都度どんどん書き込んでいくと、時が経つにつれて最高のパートナーになっていく。

問題集

化学の新演習

化学の新演習 (略称:新演習)

目安: 大問1つ15分。1周するのに80時間。3周合計150時間。

問題数は331題とやや多め。「大問1つ15分では解けない」と思うかも知れないが、1分考えて分からない問題はすぐに答えを見ることで勉強を効率化していけば可能。何冊も手を出すより、この1冊を完璧にする。

解けなかった問題、解けたけど悩んだ問題にチェックして何周も繰り返すこと。ご覧のとおり、たとえばこのページは、ぼくが一周目に解いたときには悩まずに解けた問題は一問も無かった。一周目は7割以上にチェックが付くが、それでいい。徹底的な反復学習によってのみ力がつく。このやり方で3周やれば、東大化学の過去問で7割取れる力がついているはずだ。

有機化学演習

有機化学演習 (略称:なし。そのまま「有機化学演習」)

最難関大を目指す受験生が有機化学の知識を定着させるための補助として。全問解く必要はない。例題だけやるのでもOK。

東大含め最難関大受験の場合は特に、有機でキッチリと9割以上取ることが重要になってくるので、知識に抜け漏れがあっては困る。知識の確認に東大受験生の多くが使い続けている定番の問題集。

こんな感じで基礎知識が綺麗にまとまっているので、買うつもりなら知識の整理のためにもなるべく早めの段階で。

25ヵ年

 

 

東大の化学 25ヵ年 京大の化学 25ヵ年

必須。東大には東大の、繰り返し繰り返し出題されている題材や考え方がある。これは本当に驚くべきことなのだが、2~3年周期で同内容の出題が何度も何度も繰り返されているのだ。東大の入試問題を作っているのは東大の教授なのだが、やはり教授にとってみても、東大の作風を守るという意味でも過去問を分析して似たような切り口で出題するのが安心なのだろう。

新演習を3周すれば東大過去問で7割取れると書いたが、逆に言うと新演習だけでは極めても7割までしか伸びないように感じる。東大の過去問を10年分くらい解くと東大だけが繰り返し扱う題材や思考法がわかってくるので、その段階で初めて満点近くが狙えるようになる。京大入試に向けた勉強はしたことがないので分からないが、おそらく同じような理由で京大受験でも過去問研究は必須なはず。

なるべくたくさん入試問題を解きたい人は、「25ヵ年」は少し昔のものを買って、最近の過去問は全科目セットの過去問で入手するなどの工夫をするとより多くの過去問が確保できる。

「25ヵ年」は年度順ではなく分野別に問題がまとまっている点が評価に迷うところ。ぼくは常に自分の実力を測りたかったので、切り離して年度別に並べ替えて物理とセットにして本番さながらに時間を計って解いていた。(注:裏表で別の年度の問題が印刷されていたりするので、切り離して年度ごとに解くのは結構管理が大変)

東大化学

駿台の講習「東大化学」に行くともらえる教材。めちゃくちゃ難しいので、東大理3を目指す人など東大化学で高得点を取る人が冬休み以降にやるような内容だけど、濃密でかなり使える。受験生時代にいろいろな講習に(タダで)参加した経験から言うと、駿台は講習教材の分量が圧倒的。1回駿台の志望大学の講習に出て教材だけもらっておくといい。写真のものは夏期講習でいただいたもの。冬期講習等でも多分似たような教材がもらえるはず(要確認)。

過去問演習

過去問を解く時期

「これ」と決めた問題集を3周解き終わってから取り組みたい。時期としては、遅くともセンター試験の過去問であれば夏休み~秋頃開始。二次試験の過去問は冬休み前頃には開始する。ちなみにぼくが過去問を解き始めたのは2月に入ってからだったが、これは英数の過去問を最後まで解かなかったため。普通に全教科の過去問を解く場合は2月からでは解ききれないのでオススメしない。

それまでの間は、問題集で志望校の過去問を見かけた場合はなるべく避けるようにしたい。過去問演習をしながら常に自分の実力を測れる状態にしておくほうが自分の立ち位置が分かりやすいし、モチベーションアップにも繋がるので。

過去問演習と復習

過去問は解くだけで疲れてしまって、復習が疎かになってしまうという人も多いがそれは非常にもったいない。そうなってしまう一つの原因は、1年分の過去問を全教科まとめて解いてしまうことだ。たまにはそういうことをしてもいいが、基本的にはこれをするとエネルギーを使い果たして復習が疎かになってしまう。普段の過去問演習では復習の方が大事なので、復習のエネルギ-を残しておくためにも過去問は一教科だけで解いて、その都度復習するようにしたい。

150分のテストなら復習に1時間以上かかってしまうかもしれないが、新しい問題を次々に解くよりも確実に濃密な学びができる。ここをサボるのは一番やってはいけないことだ。

問題集から過去問の流れ

以下では、それぞれのレベルで最短で高得点を狙う効率的な参考書・問題集の流れを紹介する。これは最低限の流れになっているので、実際にはプラス1~2冊気になる部分を補強する形で他の問題集も使うことになると思われる。

センター高得点レベル

 

DOシリーズ+化学の新標準演習+センター対策問題集&過去問

新標準演習はセンター形式の問題が収録されたため、センター対策もできる問題集として非常におすすめ。

MARCH高得点レベル

 

DOシリーズ+重要問題集+過去問

重要問題集は「理系標準問題集 化学」または「化学の新標準演習」に代えてもいい。

旧帝大高得点レベル

  

DOシリーズ+重要問題集+化学 標準問題精講+過去問

重要問題集を完璧に仕上げる。化学が得意で満点近くを狙う場合は「化学の新研究」を追加して、「標準問題精講」を「化学の新演習」に代える。

最難関大高得点レベル

  

化学の新研究+重要問題集+化学の新演習+過去問

重要問題集はさっさと終わらせ、化学の新演習を完璧にする。東大、京大受験生は25ヵ年を徹底的にやる。

まとめ

化学は主体的に学び始めるまではさっぱり分からないものだ。高2までは多くの学生が、喜々として化学の授業をする先生を見ながら「何言ってんだこの人…」と内心思っているかもしれない。

ただ、自ら学んで、各単元の基礎的な内容が自分の言葉で説明できるまで理解できたときには、一気に学習した知識が有機的に結びつき始め、そこにぼんやりと全体像が浮かび上がってくる。そこまで辿り着くのはとても苦しいが、その先はあと少しで晴れ渡った世界が待っている。

最後に、「化学の新研究」「化学の新演習」「化学の新標準演習」という三冊の名著を書き上げた卜部先生とともに、受験生のみなさんに次の言葉を贈りたい。

苦痛なしには勝利なし、荊を避けては王座なし。

そこに、大学受験の枠を超えた学びがありますように。

物理の勉強法・参考書についてもあわせてご参照ください。

圧倒的学習効率を実現!東大に現役合格したナマケモノが勉強のコツを語る

努力や継続がとにかく苦手なぼくだけど、中高6年間塾に通わずに独学で東大に現役合格した。そしてその秘訣は、常に学習効率を意識し、勉強という行為自体について考えていたからだと思っている。今回の記事では、生粋のナマケモノが東大に現役合格した勉強のコツ=勉強という行為そのものに対する捉え方を紹介する。

「理解」について

「分かった」「理解した」というのは、幅の広い言葉だ。ぼんやりと概要をつかんだだけでも、人は「分かった」という。しかし、この「分かった」は危険だ。分かったと思ったのに、いざ問題を解こうとすると、全然解けないということがよくあるのだ。「分かった」「理解した」には、理解度のレベルがあるということについて、意識的に考えてみる必要がある。自分の「分かった」は、実際に問題を解くときに「使える」レベルなのか?

説明できるか?

あなたがこれから先「分かった」と思ったとき、理解したことを、人に説明できるかどうかを考えてみてほしい。人に物事を説明できるということは、高度に理解できているということだ。もしその物事を自分の言葉で説明できた場合には、対象に対する理解だけでなく、イメージまでしっかりとできているということだ。

理解したことを自分の言葉で人に説明できるのなら、その知識を使って問題を解くこともできる。

「記憶」について

Brain | Flickr

やみくもに記憶してはならない。あなたの脳は、限られた資源だ。

数学が得意な人ほど、公式を覚えていないものだ。彼らにその理由を聞けば、「他の式から導出できるから」という答えが返ってくる。

また、アインシュタインの名言に、

調べられるものを、いちいち覚える必要などない。

というものがある。アインシュタインの「覚えなさ」は有名で、自宅の電話番号を一生覚えなかったとか、自分が発見した光の速度を覚えていなかったという逸話がある。アインシュタインは、調べれば分かることを覚えないようにすることで、脳という資源を温存していたのだ。

また、優れた聴覚を持つ盲目の人や、通常の知能は弱いが特定の分野に異常な才能を発揮するサヴァンと呼ばれる人々がいる。こうした人たちは、脳という限られた資源を一般の人より集中的に一箇所に注ぎ込んだため、特別な能力を得るようになったと考えられる。

記憶の節約

ここで挙げたのは特別な例であり、マネをする必要はない。ただ、この例から分かることがある。脳という資源は、節約することでその分を別の場所に注ぎ込むことができるということだ。だから、記憶という資源はできる限り節約しなければならない。

  • 考えれば分かることはなるべく覚えないようにする。
  • 10個の事象の裏に潜む一つのルールを見つけ出す。
  • 複雑な事象を学ぶ際は、その要点だけを覚えるようにする。

こうした心がけで、記憶は節約できる。

繰り返し言うが、やみくもに記憶してはならない。

「書く」ことについて

書くという行為は、時間がかかりすぎる。あなたの時間は、限られている。単なる暗記の手段として、「書く」ことを使いすぎないこと。

暗記は口と目でする

暗記をするとき、書くという行為に頼ってはいけない。英単語を覚えるのでも、社会の記述答案を覚えるのでも同じだ。暗記は口と目でするものだ。

理由は一つ。書くという行為は、時間がかかりすぎるからだ。

書かないでも覚えられるよう、訓練すること。口と目でする暗記は、集中力を要する。その分、時間を大幅に節約できる。

ペンは動いている。脳は動いているか?

暗記をするのに、「書く」という行為はいらない。

同じように、理解するのにも「書く」という行為はいらない。理解というのは、目と頭と口でするものだ。

授業中の板書は、理解を伴わないことが多い。これほど無駄な動作はない。あとで見返すため?あとで見返したいなら、同じことが教科書にも書いてある。理解せずに、頭を動かさずに書く板書は無意味だ。

授業の受け方

授業という時間は、目と頭で理解してこそ意味がある。授業が終わったら、理解した内容を口にする(=説明する)ことで、自分の理解度を確かめる。板書は、教科書に書いていないことだけをメモするといい。無駄なことが書いてあるノートは、見返すのにも無駄な時間がかかってしまう。

ヘタな教師ほど板書をキッチリととらせたがる。そうすることで授業した「っぽさ」が出るからだ。本当に優れた教師は、決して板書を強要しない。

「書く」は、思考整理のため

書くことは、理解するときにも暗記するときにも不必要だと述べた。では、書くという行為は勉強においては全く不要なのか?そうではない。書くことが有効なのは、思考を整理したいときだ。

理解や暗記が済んだ段階において、あなたの頭の中は多数のヒモが絡まりあったような状態にある。頭の中に全てのアイデアがあるのだけど、まだそれらの関係性が整理できていない状態だ。このようなとき、書くことによって、絡まりあったヒモを解きほぐし、一本の道筋を目の前に組み立てることができる。

学習のプロセスについて

学習には、「理解」「暗記」「整理」というプロセスがある。

あなたは「頭」「目」「口」「ペン」という道具をもっている。

学習のプロセスをどの順番に持ってきて、それぞれのプロセスでどの道具を使うのか?ぼくにはぼくのやり方がある。あなたは、あなたが考え、あなたが納得したやり方を実践することが一番効果的だ。

 「夢」について

大きな夢を持つこと。そしてそれを細分化し、小さな目標として設定すること。

たとえば、「日本一英語ができる人」という夢をもつ。そしてそれを細分化し、「いまはこのペースでこれだけの単語を覚えなければならない」と目標をたてる。

夢があれば、方向を見失わない。目標があれば、行動ができる。

あなたの人生が実り多きものになるよう。

【都立高校受験必勝勉強法】時期ごとの取組み・過去問の解き方・オススメ問題集等(共通問題編)

ぼくは昔、とある大手高校受験塾で中学3年生(受験生)を教えていた。教科は数学が中心で、講習を含めると全教科教えたことがある。

生徒は初めは真ん中くらいの学力だったけど、よくついてきてくれて、冬頃には数十校合同の合宿で数学のテストが行われると、自分の担当クラスの平均点が塾全体のトップをとったりもした。生徒たちは、共通問題校だと駒場や三田といったトップクラスの学校に合格してくれた(グループ作成校に受かった子も複数)。受験期には、都立共通問題の過去問(全員解いたことが無い年のもの)のクラス平均が90点を超えることもあった。そういうわけでぼくは、都立高受験の成績を上げる方法については、めちゃくちゃ詳しいつもりだ。

その経験をもとに、中3の成績を上げる方法・入試に合格する方法を、できるだけ分かりやすくまとめてみた。なるべく具体的になるように、勉強への取り組み方からオススメ問題集、Vもぎ・Wもぎの受け方、過去問の使い方、入試直前の準備まで紹介したので、参考になれば嬉しい。

 


一学期(4月~7月前半)

計算力アップ

もし数学が不安で、この時期から勉強しておきたいのなら、一番大事なことは計算力アップだ。分数の計算、文字式の変形はしっかりとマスターしておかないと、あとあと大変なことになる。もし平方根や因数分解もすでに習っているのなら、この時期に徹底的にマスターしておく必要がある。

基本の定着

難しいことができるようになりたい気持ちは分かるが、今の時期は基本を全部おさえることが一番大事だ。都立共通問題の大きな特徴は、基本問題の配点が大きいことだ。例えば数学は記述問題を除いて、簡単な問題も難しい問題も全部5点の配点になっている。しかも、応用問題は全部で4~5問しかない。4~5問というと、20~30点分だ。ということは、応用問題が1問も解けなくても、基本問題で取りこぼさなければ70点以上は絶対にとれるということだ。

応用問題は、夏休みからだんだん勉強していけば十分に間に合う。もしも夏休みが過ぎてから基礎が穴ぼこだらけだったら、その取り返しはかなりしんどい。なので、1学期の間はとにかく、上を見るよりも足元を固めることをオススメする。

この時期はまだ、問題集を買う必要はない。先生に「文字式の計算のプリントください」とか「合同のプリントください」とか言えば、めんどくさそうにしながらもよろこんで渡してくれるはずだ。

英単語を覚える

この時期、数学は基礎以外にあまりやることがない。中学数学の範囲はそんなに広くないので、基本がしっかりしていれば勉強は夏休みからで十分間に合う。また、理社はやればすぐに伸びるので、この時期はそれほど力をかけなくてもいい。なので、この時期は英単語を覚えるのがいい。なぜ英単語がいいかというと、学校の進度に関係なく、自分のペースで先々まで進められるからだ。この時期に英単語を覚えてストックしておけば、秋から余裕ができて、結果として数学に回せる時間が増える。

「中学英単語ターゲット1800」「ランク順中学英単語1850」

部活に集中

この時期は、しっかりと部活に打ち込んでほしい。勉強だけのやつは、面白くない。勉強は夏休みからいくらでもできる。部活は今しかできない。部活じゃなくても、勉強以外で自分が熱中できることなら何でもいい。音楽でも料理でもいい。写真でもプログラミングでもいい。勉強以外に何かに熱中したことのある人は、大人になってからも視野が広く、人間関係がうまくいきやすいものだ。

ただし、熱中する対象はなるべくゲームじゃない方がいい。ゲームはほとんどの場合、熱中しているんじゃなくて、脳みそ空っぽで時間を吸い取られているだけだ。

夏休み(7月後半~8月)

夏休みが明けて2学期になってしまうと、定期テスト対策(=内申対策)に時間がとられて、入試対策の勉強に使える時間が少なくなってしまう。なので、夏休みのうちにある程度入試が見えるくらいまで仕上げる気持ちで取り組む必要がある。特に、英数国の3科目は夏休み中に穴を無くし、一つは得意科目を作っておかないと間に合わなくなる。

夏期講習に通う

家ではダラけてしまう人は、塾の夏期講習に行こう。ふつうの進学塾であれば、だいたい夏期講習の前か、遅くとも夏期講習中くらいには3年生の内容を全部教えきる。早めに中学内容を習い切ることで、全体像がわかる。全体像がわかれば、入試向けの問題集を買って解いていけるようになる。そうすると、自分の得意・苦手分野が分かる。自分の得意・苦手分野がわかれば、得意を伸ばす、苦手を潰すといった戦略を練って、集中的に対策できるようになる。

この時期まで塾に通ってこなかった人は、中3の夏期講習から塾に入って、授業に付いていけないんじゃないかと心配になるかもしれない。これについては、しっかり塾の先生とコミュニケーションがとれる生徒であれば問題ない。塾の先生も、ついてこれない生徒がいて授業が成り立たなくなるのは一番困るので、未習分野は補習とかで対応してくれるのが普通だ(入塾する前に、補習してくれるかちゃんと確かめましょう)。ざっと一周でも聞いてしまえば、あとは授業に出ているうちにすぐにみんなと同じレベルに追いつける。

少しついていく自信がないという生徒は、やはり遅くとも中3になるくらいまでには塾に入っておくとよい。

ちなみに、塾に行かなかったからといって、絶対に志望校に合格できないかというとそんなことはない。教科書を読めば一通りのことが分かるくらいの学力があって、自分で計画を立てて勉強ができる生徒は、塾に行く必要はそんなにない。ただ、中学3年生でそこまで自律心を持つのは難しいので、やはり塾は普通の子は通った方がいいだろう。

オススメ問題集(数学)

全範囲を習い終わったこの頃にオススメの数学の問題集が以下の5冊。

 

 

下に行くほど難しくなる。どれもよくまとまっていてオススメ。書店で中身を見て気に入ったものを選んでみてほしい。

上2つは共通問題で70点、真ん中2つは共通問題で85点、一番下の塾技は、共通問題数学で満点を狙うか、グループ作成校を受ける生徒が使うレベル。

受験生の50%以上が解ける落とせない入試問題 高校入試合格BON!数学

受験生の50%以下しか解けない差がつく入試問題 でる順数学

塾技100

都トレ

都立共通問題対策では間違いなく最強の問題集。都立共通問題にそっくりなオリジナル問題が各分野につき20問近く掲載されている。これだけを何回も繰り返すだけでも満点近い点数が十分狙える。

ただ、難点があって、塾でしか買えない(個人販売・書店販売を一切行っていない)うえに、解説が全然詳しくない。なので、塾に通っていて、分からない問題をいつでも先生に聞ける環境の人にだけオススメする。あと、各単元初めの一問だけ本物の過去問なので、初めの一問は過去問演習を始めるまで解かない方がいいかもしれない。

早い人は夏休み頃から使い始めていいと思われる。もちろん冬休みになってからでも、いつ使ってもオススメの問題集。5教科とも売っているけれど、数学は特に使える。他の教科はまあまあ。

都トレ

Vもぎ・Wもぎを受ける

夏休み前か夏休み中から、VもぎかWもぎを積極的に受けよう。どちらか片方でかまわない。どちらでもほとんど違いはない。1回受けたら、同じ方を受け続けると成績変化をグラフにしてくれたりする。1回4500円かかるけど、勉強のペースメーカーとして2ヶ月に1回以上は受けることをオススメする。

Vもぎ・Wもぎが返ってきたら

成績表を見て、志望校の判定をA判定にするには、偏差値いくつが必要かを確かめる。

模擬試験の判定の見方(何判定を目指すか)は人それぞれだ。「都立に絶対に受かりたい、私立は嫌だ」という人ならS~A判定を目指す。「私立の選択肢もあるけど、できれば都立に行きたい」という人ならA~B判定を目指す。「ダメ元で受けて、もし受かったら都立に行く」という人ならC判定でもいい。

自分が目指す判定がA判定なら、A判定に必要な偏差値を見る。A判定に必要な偏差値がたとえば63だと分かったら、次は偏差値換算表を見る。すると、偏差値63に必要な3科計、5科計の点数がわかる。たとえば偏差値63に必要な3科計の点数が240点だったら、それを自分の得意・不得意に応じて、国数英に割り振る。数学が得意なら、国75数学90英語75とか。ここまでくれば、あとは「数学で90点とるには、あとどの問題が解ければいいのだろう」と考える。そうすると、具体的な戦略が見えてくる。

D~E判定だったら、勉強への取り組み方を見直すか、さもなくば志望校を変える必要がある。もちろん、D~E判定から頑張って受かる子も毎年いる(ぼくのクラスの生徒は夏休み前はD判定・E判定ばかりだった)ので、本当に受かりたくて頑張れるのであれば全然問題ない。

ケアレスミスの考え方

特に夏休み前後の頃は、Vもぎ・Wもぎが返ってきて、中身を見るとケアレスミスでいっぱい点数を落としていることが多い。そういうときに、「ケアレスミスだからおっけー」と思ってしまう子が多い。そういう子は、最後までそのミスをし続け、入試本番でもこける。全く考え方が逆なのだ。手も足も出なくて解けないのはまだいい。そういう難しい問題は、同じレベルの他の受験生も苦戦しているからだ。逆にケアレスミスは、あなただけのミスなので、直接点差になる。つまり、ケアレスミスだけは絶対にやってはいけないのだ。

二学期(9月~12月)

二学期は内申が決まるので、入試対策ばかりもしていられない。中3生にとっては、変に神経をすり減らす時期だ。内申対策をするべきか、入試対策をするべきか悩んでいる間にどんどん時間が過ぎてしまったりする。どういった勉強をするにしても、悩む時間を減らし、集中して勉強できる環境を作ることが大事だ。

二学期の内申対策

内申が1違うと、入試本番の小問1問分くらい点数が違う。微妙な差だが、この差は小さくはない。定期テスト対策をするべきか入試対策をするべきか迷ったら、「いま内申1あげるのと、入試問題で1問多く解けるようにするの、どっちが簡単だろう?」と考えてみるといい。正解はないので、自分の納得できる配分で、なるべくストレスが溜まらないように勉強するのがいい。個人的には、内申なんてめんどくさい制度は無くしてしまえばいいと思っているのだが、そんなことを言っていてもしかたない。

二学期の入試対策

この時期は数学については、基本的には夏休み後半の勉強を維持していけばOK。まだ余裕がある時期なので、塾技に載っているような、学校で習わない裏ワザ公式を新しく覚えるのもいい。

理想を言うと、英数国の3科目は夏休みのうちにある程度仕上げて、二学期は理社にも時間をあてられるといい。

過去問演習

夏休みの終わりから2学期の初め頃に一度、実際の過去問を時間を計って解いてみるといい。過去問は本を買ってもいいけれど、ネットで検索すればだいたい見つかる。塾に通っている人は、塾の先生に印刷してもらって、分からなかった問題は解説をお願いしてしまえばいいので、本を買う必要はあまりない。グループ作成校や私立高校の中には、ネットで過去問を見つけにくい学校もあるので、そういう学校を目指す場合は本の過去問を買う必要がある。

過去問を解き始める時期

過去問を解き始める時期は、中学内容を全部習い終わったときをオススメする。一度過去問を解いて敵を知ることで、その対策が一気に具体的に立てられるようになるからだ。VもぎやWもぎでも中身はほぼ一緒なのだけど、やはり本物と思って解くとまた違った感覚が得られるものだ。本格的に過去問を解き始める時期は12月頃をオススメする。12月頃からしっかりとやっていくと、入試本番までに20年分の過去問を解くことができる。

過去問演習と時間の使い方

解き始めの頃は、50分間時間を計って解く。慣れてきたら、45分とかに縮めて解くことをオススメする。実際の入試本番では焦ってしまうので、丸々50分しっかり使えるとは思わない方がいい。

あと、解き方を明確に決めておく方がいい。解く順番(数学は1~5番をそのまま並んでる順番に解くのが一番良さそう)、3分考えて分からなかったら飛ばすとか、残り3分は見直しをするとか。入試本番に、どこから解こうとか、飛ばすか飛ばさないかとか悩んでいる暇はないので、ここの戦略は普段の過去問演習でしっかりと自分なりに一番良いやり方を見つけておく必要がある。

冬休みから入試直前(12月後半~2月)

続・過去問演習(目指せ20年分)

この時期は、とにかく過去問をやりまくる。共通問題の過去問だけではすぐになくなってしまうので、別の過去問にも手を出す必要がある。たとえばVもぎ・Wもぎの過去問や、グループ作成校のうち、そこまで難しくない学校(墨田川、立川など)の平成25年度以前の過去問をやる。平成25年度以前は、グループ化前の純粋な自校作成問題なので、墨田川や立川の過去問が今よりもやや簡単にできている。共通問題の過去問と、自校作成問題の過去問をあわせて20年分くらいやればかなり力はついているはずだ。

墨田川と立川の過去問がオススメ

冬休みの時期は特に、共通問題校を受ける人でも墨田川と立川の過去問を解くことをオススメする。共通問題よりもちょっとだけむずかし目の問題をやっておくことで、それに慣れてしまおうという作戦だ。筋トレと同じで、練習の段階ではちょっとキツいと思うくらいをやっておくと成長できる。この2校の過去問をある程度まとめてやっておけば、共通問題に戻ったときに少し簡単に感じるはずだ。

それに、墨田川と立川の自校作成時代の問題は、非常によくできている。立川は特に質が高い。さらに、この2校は学校のホームページに過去問を古くまでさかのぼって載せてくれており、簡単に手に入るのも良い。本当にありがたい存在。

墨田川 立川

入試直前

入試ギリギリまで、今までと同じことを信じてやり続けること。入試前日も、過去問1年分をキッチリ解くくらいがいい。変に焦っていろいろなことを試さない。また、エネルギー充電のために前日の朝から晩まで休養しすぎると、夜になって全然疲れていなくて眠れなくて困ることもある。適度に体と脳を疲れさせて、夜ゆっくり眠れるように備えよう。

入試本番

高校受験当日に必要な持ち物

入試当日

今までやってきたことを信じよう。一年間磨き上げた自分の力、ようやくそれを試すときが来た。一回きりの晴れ舞台だ。最高のパフォーマンスを見せてやろう。


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