努力や継続がとにかく苦手なぼくだけど、中高6年間塾に通わずに独学で東大に現役合格した。そしてその秘訣は、常に学習効率を意識し、勉強という行為自体について考えていたからだと思っている。今回の記事では、生粋のナマケモノが東大に現役合格した勉強のコツ=勉強という行為そのものに対する捉え方を紹介する。
「理解」について
「分かった」「理解した」というのは、幅の広い言葉だ。ぼんやりと概要をつかんだだけでも、人は「分かった」という。しかし、この「分かった」は危険だ。分かったと思ったのに、いざ問題を解こうとすると、全然解けないということがよくあるのだ。「分かった」「理解した」には、理解度のレベルがあるということについて、意識的に考えてみる必要がある。自分の「分かった」は、実際に問題を解くときに「使える」レベルなのか?
説明できるか?
あなたがこれから先「分かった」と思ったとき、理解したことを、人に説明できるかどうかを考えてみてほしい。人に物事を説明できるということは、高度に理解できているということだ。もしその物事を自分の言葉で説明できた場合には、対象に対する理解だけでなく、イメージまでしっかりとできているということだ。
理解したことを自分の言葉で人に説明できるのなら、その知識を使って問題を解くこともできる。
「記憶」について
やみくもに記憶してはならない。あなたの脳は、限られた資源だ。
数学が得意な人ほど、公式を覚えていないものだ。彼らにその理由を聞けば、「他の式から導出できるから」という答えが返ってくる。
また、アインシュタインの名言に、
調べられるものを、いちいち覚える必要などない。
というものがある。アインシュタインの「覚えなさ」は有名で、自宅の電話番号を一生覚えなかったとか、自分が発見した光の速度を覚えていなかったという逸話がある。アインシュタインは、調べれば分かることを覚えないようにすることで、脳という資源を温存していたのだ。
また、優れた聴覚を持つ盲目の人や、通常の知能は弱いが特定の分野に異常な才能を発揮するサヴァンと呼ばれる人々がいる。こうした人たちは、脳という限られた資源を一般の人より集中的に一箇所に注ぎ込んだため、特別な能力を得るようになったと考えられる。
記憶の節約
ここで挙げたのは特別な例であり、マネをする必要はない。ただ、この例から分かることがある。脳という資源は、節約することでその分を別の場所に注ぎ込むことができるということだ。だから、記憶という資源はできる限り節約しなければならない。
- 考えれば分かることはなるべく覚えないようにする。
- 10個の事象の裏に潜む一つのルールを見つけ出す。
- 複雑な事象を学ぶ際は、その要点だけを覚えるようにする。
こうした心がけで、記憶は節約できる。
繰り返し言うが、やみくもに記憶してはならない。
「書く」ことについて
書くという行為は、時間がかかりすぎる。あなたの時間は、限られている。単なる暗記の手段として、「書く」ことを使いすぎないこと。
暗記は口と目でする
暗記をするとき、書くという行為に頼ってはいけない。英単語を覚えるのでも、社会の記述答案を覚えるのでも同じだ。暗記は口と目でするものだ。
理由は一つ。書くという行為は、時間がかかりすぎるからだ。
書かないでも覚えられるよう、訓練すること。口と目でする暗記は、集中力を要する。その分、時間を大幅に節約できる。
ペンは動いている。脳は動いているか?
暗記をするのに、「書く」という行為はいらない。
同じように、理解するのにも「書く」という行為はいらない。理解というのは、目と頭と口でするものだ。
授業中の板書は、理解を伴わないことが多い。これほど無駄な動作はない。あとで見返すため?あとで見返したいなら、同じことが教科書にも書いてある。理解せずに、頭を動かさずに書く板書は無意味だ。
授業の受け方
授業という時間は、目と頭で理解してこそ意味がある。授業が終わったら、理解した内容を口にする(=説明する)ことで、自分の理解度を確かめる。板書は、教科書に書いていないことだけをメモするといい。無駄なことが書いてあるノートは、見返すのにも無駄な時間がかかってしまう。
ヘタな教師ほど板書をキッチリととらせたがる。そうすることで授業した「っぽさ」が出るからだ。本当に優れた教師は、決して板書を強要しない。
「書く」は、思考整理のため
書くことは、理解するときにも暗記するときにも不必要だと述べた。では、書くという行為は勉強においては全く不要なのか?そうではない。書くことが有効なのは、思考を整理したいときだ。
理解や暗記が済んだ段階において、あなたの頭の中は多数のヒモが絡まりあったような状態にある。頭の中に全てのアイデアがあるのだけど、まだそれらの関係性が整理できていない状態だ。このようなとき、書くことによって、絡まりあったヒモを解きほぐし、一本の道筋を目の前に組み立てることができる。
学習のプロセスについて
学習には、「理解」「暗記」「整理」というプロセスがある。
あなたは「頭」「目」「口」「ペン」という道具をもっている。
学習のプロセスをどの順番に持ってきて、それぞれのプロセスでどの道具を使うのか?ぼくにはぼくのやり方がある。あなたは、あなたが考え、あなたが納得したやり方を実践することが一番効果的だ。
「夢」について
大きな夢を持つこと。そしてそれを細分化し、小さな目標として設定すること。
たとえば、「日本一英語ができる人」という夢をもつ。そしてそれを細分化し、「いまはこのペースでこれだけの単語を覚えなければならない」と目標をたてる。
夢があれば、方向を見失わない。目標があれば、行動ができる。
あなたの人生が実り多きものになるよう。
3 comments On 圧倒的学習効率を実現!東大に現役合格したナマケモノが勉強のコツを語る
はじめまして。
現在、会計士試験に向けて勉強をし始めた、大学3年のケイタと申します。
難関試験と言われている試験に短期で合格する人もいれば、長期で合格する人がいる中で、その違いは勉強方法かなと思い、自分なりで勉強方法をネットで検索していたところSaitoさんのサイトを発見致しました。
私も大学受験の際は独学でやりました。その結果、惨敗をし日東駒専のどこかの大学に在学中です。
宅浪の失敗もやはり、勉強方法と参考書を絞りきれなかったことが敗因だと思っています。
このサイトの中に記載されている勉強方法をみて、なるべく書かずに、目と口と頭を使って理解暗記をし、思考整理のためにペンを持つと書かれていたのを拝見し、これなら効率的にできると思いました。
また、サイトを見ていて、思考整理の段階で書くという手段が出てきたのですが、どのような感じて書いているのでしょうか?
仮に論文の問題でしたら、要点だけ書いていって時間を短縮したりするなど、、。
返信いただけたら嬉しいです。
はじめまして。大変ご丁寧にご質問いただきまして、ありがとうございます。
>会計士試験に向けて勉強をし始めた、大学3年のケイタと申します。
私の記事は大学受験までの勉強を基にしたものなので、会計士試験に向けた勉強に役立つかどうかはよく分かりませんが、
分かる範囲でお答えできればと思います。
>思考整理の段階で書くという手段が出てきたのですが、どのような感じて書いているのでしょうか?
まずはお分かりいただけているかとは思いますが念のため、「思考整理の段階で書く」と書いた意図は、「書くことは有効な勉強手段ではあるが、時間がかかりすぎるので使いどころを意識せよ」ということです。
会計士試験についてはあまり詳しくないですが、なるべく具体的にお答えしたく思います。
たとえば財務会計論などの科目があるかと思います。財務会計論の中でも計算と理論があるかと思います。
少し調べたところ、計算問題については、少しは穴があってもいいから(7割程度の理解でかまわないから)なるべく速くまず範囲を1周勉強したあと、ひたすら本試験レベルの問題演習を積むのが効率的な戦略のようです。範囲を1周勉強する際は、ペンを持つ必要はないと思います。インプットは「読む」、アウトプットは本から目を上げて何が書いてあったか思い出す、その繰り返し程度で十分かと思います。そしてその後の問題演習では(当然のことながら)ペンを持ってノートに書きながら解く方がよく、ここでは時間をケチって頭で解くようなことはしない方がいいと思います。
そのようにして問題演習の勉強がかなり進んできたとき、一度複数の問題の解法パターンをノート1ページにまとめてみたりすることをお勧めします。たとえば連結会計について複数の状況設定(問題パターン)があり、それぞれに対して別々の解法パターンがあるとすると、それを何も見ずに自分の頭で思い出しながら樹形図を書いて解法パターンを書いていくといったことです。このような行為を、私は「思考整理」と呼んでいます。
理論的な分野についても、かなり勉強が進んできたあとの段階で、自分が今までに身に付けてきた知識を一度整理したいと思う時期がくるかと思います。そのときに初めてペンを持って、ノート1ぺージに何も見ないでまとめてみるのが良いかと思います。
>仮に論文の問題でしたら、要点だけ書いていって時間を短縮したりするなど、、。
論文の問題でしたら、
・普段の勉強では要点を思い出すだけにとどめる。
・たまに要点のみを書き出すということをする(念のため、書けるということの確認)
・さらにたまに、全文書くということをする。
といった感じが良いのではないかと思います。
わざわざ調べてくださった上での返信、本当にありがとうございます。
疑問に思っていたことが解決できました。
計算問題は常に書くという考えを払拭できたかなと思います。
ありがとうございました。