映画の本質に迫る!芸術的で美しい歴代名作映画ランキングベスト50作品。

「狂気」と「芸術」

大学時代ゲオの近くに住んで1日3~5本の映画を見続けたぼくによると、映画の本質は狂気と芸術だ。監督の狂った才能を映画という形に昇華すると、それが芸術となって表れる。

時には娯楽映画もいい。映画を見て「元気になった!」「学んだ!」と実益を求めるのもいい。ただ、本当に映画に向き合うというのは、そういうことではない。本物の映画に対面するとき、人は圧倒され、黙り込み、静かに興奮する。

この記事では、そうした真の「映画体験」を与えてくれる芸術的な作品たちを紹介する。どれも人生で一度は絶対に観るべき映画。ぼくが魂を揺さぶられた厳選の50作品だ。

 

50位 アニー・ホール

監督:ウディ・アレン

妙にリアルな男女の日常と生い立ちとこれからをアンニュイな感じで美しく描き出す名作。ウディ・アレン監督は否定しているが、明らかに監督の自伝的作品である。アニー・ホールのファッションにも注目が集まった。

アニー・ホール

49位 アメリカン・ヒストリーX

監督:トニー・ケイ

白人至上主義ギャングのカリスマのデレクと、デレクの弟で彼を崇拝するダニーを中心にアメリカ社会の病理を描き出す怪作。3年間の服役から帰ってきた兄は穏やかになっていた。弟はそんな兄に反発し、ますます狂った道を突き進むが…。

アメリカン・ヒストリーX

48位 ダンサー・イン・ザ・ダーク

監督:ラース・フォン・トリアー

失明していく病と、狂った精神と、母の愛。あのマツコ・デラックスもラジオで好きな映画としてお薦めしていた本作。鬱々とした気分になりたいときに。監督は鬱病持ち。

ダンサー・イン・ザ・ダーク

47位 善き人のためのソナタ

監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク

監視社会下の旧東ドイツ。管理する側のヴィースラー大尉は、管理対象の美しい生き方と音楽に触れるにつれ、心を揺さぶられていく。

善き人のためのソナタ

46位 最強のふたり

監督:エリック・トレダノ

学はないがユーモアと思いやりのある黒人青年と、著名な文学者の心の交流を描いた、分かりやすく楽しめるフランス映画。といって大衆的すぎることなく、美しい映像と物憂げな表現によって芸術的な側面も見せてくれるバランスの良い作品。

最強のふたり

45位 メメント

監督:クリストファー・ノーラン

10分間しか記憶が保てないレナードが主人公で、記憶を辿るように時系列を逆回しに進めていく映画。クリストファー・ノーラン監督らしい練りに練った脚本。一回見ただけではストーリーは完璧には分からないかもしれないが、それでも見終わったときには「すごい!」と叫んでいるだろう。

メメント

44位 フォレスト・ガンプ/一期一会

監督:ロバート・ゼメキス

うすのろの主人公フォレスト・ガンプがいじめられたり成功したり女の子を好きになったり報われなかったりする映画。こんなに雑多なテーマでここまでの映画に仕上げるのはロバート・ゼメキス監督の腕としかいえない。見るたび謎の虚しさを感じてしまう作品。

フォレスト・ガンプ/一期一会

43位 エスター

監督:ジャウム・コレット=セラ

実は映画通であるくりぃむしちゅーの有田さんも激推しのホラー映画。シックス・センスやエクソシストに連なる、洋画ホラーの新たなる金字塔といえる作品。エスター役のイザベル・ファーマンの演技力がすごい。ただ物陰から急に何かがでてきて驚かせるような安易なホラーではない。ストーリーが展開するにつれ、尾てい骨あたりからぞっとする感覚が広がっていく。

エスター

42位 ビフォア・サンセット

監督:リチャード・リンクレイター

ビフォア・サンライズ」「ビフォア・サンセット」「ビフォア・ミッドナイト」と9年おきに発表されたビフォアシリーズの2作目。イーサン・ホークとジュリー・デルピーの美しい物語。1作目の「ビフォア・サンライズ」を見ている前提の映画なので、まずは1作目からどうぞ。

ビフォア・サンセット

41位 レオン

監督:リュック・ベッソン

殺し屋と、彼に師事する少女の話。ベタだけど飽きさせないストーリーと、美しく幼きナタリー・ポートマン。この映画を面白くないという人はまずいないので、絶対にハズレのない映画が見たいときにオススメ。悪役のゲーリー・オールドマンもハマり役で、演者たちがみんな良い味を出している。

レオン

40位 ストレイト・ストーリー

監督:デヴィッド・リンチ

あの奇才デヴィッド・リンチ監督が「普通」の映画を撮ったらこうなるという例。頑固ジジイが時速8キロのトラクターで病気の兄に会いに行くロードムービー。この物語の美しい部分は、主人公アルヴィン・ストレイトの頑固といえば頑固だが、実直といえば実直という「ストレート」すぎる生き方だ。

ストレイト・ストーリー

39位 キック・アス

監督:マシュー・ヴォーン

キック・アスこそ最高のB級映画。クロエ・モレッツ可愛い。気軽に観られて、ストーリーは狂っている。そんな映画でオススメといえば絶対にキック・アスは外せない。

キック・アス

38位 ノッティングヒルの恋人

監督:ロジャー・ミッシェル

大女優と一般人男性の禁断の恋愛を描いた作品。まずはこの設定が良い。それに加え、同居人スパイクなどの愉快すぎるキャラクター。美しきジュリア・ロバーツ。ヒュー・グラントの最高の演技。名曲She。これ以上に幸せな恋愛映画はない(断言)。女性にも迷いなくオススメできる映画。洋画ロマンスの決定版。

ノッティングヒルの恋人

37位 マルコヴィッチの穴

監督:スパイク・ジョーンズ

俳優ジョン・マルコヴィッチの脳内へと繋がる穴を見つけた青年の話。ただのコメディかとおもいきや、話はとんでもない方向に…。初めから奇想天外なのに、そこからどんどん狂っていくストーリー。変なものを変なものとして受け入れられる人にだけオススメする映画。

マルコヴィッチの穴

36位 未知との遭遇

監督:スティーヴン・スピルバーグ

宇宙人との邂逅をリアルに突き詰めて描いた作品。スピルバーグ監督の映画といえば「ジョーズ」「ジュラシック・パーク」「インディ・ジョーンズ」を初め、大ヒット作品は山ほどあるが、芸術的という観点では「未知との遭遇」は外せない。ジョン・ウィリアムズの完璧すぎる音楽が最高にマッチしている。現代、これより面白いSF作品はいくつもあるが、芸術性でこれに勝る作品にはそうお目にかかれない。

未知との遭遇

35位 アバター

監督:ジェームズ・キャメロン

巨匠ジェームズ・キャメロンが3D作品を本気で撮ったということで話題になった作品。映像は超一流、ストーリーもなかなか良い。アバターではナヴィ語という人工言語が出てくるが、これがまたよく出来ている。放出音と、母音(あるいは音節核)として用いられているふるえ音の2つの発音がナヴィ語にエキゾチックさを加えていて、見ればマネしてみたくなるはず。

アバター

34位 ライフ・イズ・ビューティフル

監督:ロベルト・ベニーニ

ユダヤ人に対する迫害行為の流れで、強制収容所へと連れて行かれた家族。これを父親のユーモアでゲームと思い込み、乗り切ろうとする息子のジョズエ。ストーリーはシンプルながらも評判が高く、誰にでもオススメできる名作。

ライフ・イズ・ビューティフル

33位 イージー・ライダー

監督:デニス・ホッパー

アメリカ文化に興味がなければ魅力は半減するかもしれないが、それでも本作は表現力が高く、「映画を見たなぁ」という気分になれる作品。自由を標榜する強国アメリカが抱える矛盾を描き出す。単純にロードムービーとしてもかっこいい。

イージー・ライダー

32位 猟奇的な彼女

監督:クァク・ジェヨン

恋愛物の韓国映画は本当にレベルが高い。 その中でも特にオススメなのがこちら。美人で人使いが荒いけれど、本当は繊細な心を持った女性に振り回される冴えない優しい男のストーリー。低予算ながら質が高く、ファンの多い作品。

猟奇的な彼女

31位 ニュー・シネマ・パラダイス

監督:ジュゼッペ・トルナトーレ

映写師と少年の心の交流を描いた感動の名作イタリア映画。ただの仲良しではなくて、本当に心から少年の将来のことを考えてくれていた映写師の行動が美しいポイント。初公開版と完全オリジナル版の2種類あり、後者の方が50分ほど長い。前者の方が簡潔でより感動できるとの声が多く、初めに見るなら初公開版をオススメしたい。

ニュー・シネマ・パラダイス

30位 パルプ・フィクション

監督:クエンティン・タランティーノ

地味めのギャングの犯罪を主体とするいくつかのストーリーを、時系列をシャッフルして描き出した作品。名作と名高い映画だが、名作と思って見るとつまらないかもしれない。根本はくだらない映画なのだけど、不完全な子どもを見守るような気持ちで観てみるとすごく愛着が湧いてくるような不思議な映画。

パルプ・フィクション

29位 ゆれる

監督:西川美和

智恵子の死は、事故なのか、事件なのか-。脚本とキャスティングが素晴らしく、飽きさせない映画。劇中でオダギリジョーが乗る車など、選ばれているモノにもセンスが溢れている。ストーリーは面白く、観て美しい邦画の傑作。「ゆれる」というタイトルも素晴らしく、作中ではいろいろなものが揺れている。終わってから揺れていたものは何か振り返ってみてほしい。

ゆれる

28位 ビフォア・サンライズ 恋人までの距離

監督:リチャード・リンクレイター

ビフォア・サンライズ」「ビフォア・サンセット」「ビフォア・ミッドナイト」と9年おきに発表されたビフォアシリーズの始まり。ウィーンで偶然出会った二人の若き男女が一晩にして恋に落ちる物語。ロマンチックすぎる設定なのに、ドキュメンタリーのようなリアルさを帯びているのは、主演の二人が共同で脚本にも関わっているからだろう。彼ら自身を投影しているかのような自然体の演技がこの映画の魅力をいっそう高めている。

ビフォア・サンライズ

27位 バグダッド・カフェ

監督:パーシー・アドロン

ドイツからの太った旅行者ヤスミンが、砂漠の中のさびれたカフェをちょっとだけ盛り上げる物語。基本的にはほのぼの元気なストーリーなのだけど、荒涼とした砂漠の映像と音楽の哀愁感との合わせ方がたまらない。

バグダッド・カフェ

26位 セブン

監督:デヴィッド・フィンチャー

ブラッド・ピットとモーガン・フリーマンの怪演が素晴らしい傑作サスペンス・ホラー。ストーリーはサスペンスとしては最高の部類。決して映画を見る前にネタバレを見ないようにしたい。作りこまれたストーリーと、ダークな画作りが美しい映画。

セブン

25位 レザボア・ドッグス

監督:クエンティン・タランティーノ

クエンティン・タランティーノ監督といえば、「パルプ・フィクション」が名作と名高いが、ぼくは処女作である「レザボア・ドッグス」の方をオススメしたい。お互いに素性を知らない6人が集まり銀行強盗をしたが、その計画が警察に知られていたことから誰か裏切り者がいる…という話。過激な暴力描写と、タランティーノらしい気の利いたオシャレな脚本が魅力。 一作目からタランティーノらしさにどっぷり浸れる作品。

レザボア・ドッグス

24位 呪怨(ビデオオリジナル版)

ホラーが苦手な方のために、商品画像は表示していません。

監督:清水崇

Jホラーとしては「リング」と連なる2大巨頭、呪怨。その本当の始まりの一作が「呪怨 ビデオオリジナル版」。低予算で製作されたにもかかわらず口コミで話題を集め、最終的にはハリウッド進出するまで上り詰めた夢のある作品。Jホラーは深夜0時以降、電気を消して一人で見ましょう。

呪怨

23位 太陽を盗んだ男

監督:長谷川和彦

邦画の最高傑作の一つ。邦画の名作が見たければ、「七人の侍」よりもまずはこちらを見ていただきたい。中学校教師が原爆を作成し、日本政府を脅すという狂ったストーリー。公開当時興行的に成功しなかったのでしばらくカルト映画扱いだったらしいが、時間の審判によって今では正当な評価を得た。圧倒的な熱量と、理屈を語らぬ芸術性が素晴らしい名作。

太陽を盗んだ男

22位 ドッグ・ヴィル

監督:ラース・フォン・トリアー

ラース・フォン・トリアー監督にしか撮れない鬱映画。黒い床に白線が描かれた簡易セットの中で、俳優たちがパントマイムのように演じる中で浮かび上がる人間の本当の姿。鬱々とした気分になりたいときにどうぞ。

ドッグヴィル

21位 トゥルー・ロマンス

監督:トニー・スコット

こちらはクエンティン・タランティーノ脚本作品で、やはりその脚本のうまさが出ている。ロードムービーとアクションとロマンスの良いところが全部詰まった作品。どことなく漂ってくるB級感と、中学生男子が思い描いたような優しいヒロインが最高。あるようでないようなリアリズム。軽く観られて、それでいて芸術的な美しい映画。

トゥルー・ロマンス

20位 ターミネーター1, 2

監督:ジェームズ・キャメロン

さすがジェームズ・キャメロン監督というほかない映画。ただの娯楽映画ではない、セリフと映像と音楽の全てにジェームズ・キャメロン監督の映画哲学が表れた最高傑作。特にターミネーター2は完璧というほかない、非の打ち所がない映画。終わりに向けての盛り上げ方がうますぎる。続編としてターミネーター3,4があるが、これらはジェームズ・キャメロン監督作品ではない。出来栄えのほどは残念作品といってしまいたいレベル。

ターミネーター2

19位 エル・トポ

監督:アレハンドロ・ホドロフスキー

カルト映画界の伝説的作品。監督がただ単に自分が撮りたいものを撮ったら結果的にこうなったという感じのする映画。ストーリーは最強のガンマンの流浪の旅という感じなのだけど、宗教的でよく分からないところも多い。ややこしいことは考えないで適当に観るのが良い。実はジョン・レノンをはじめ、この作品のファンである超有名人も多いとのこと。「奇妙奇天烈」「謎の世界観」という言葉がピッタリの奇跡のB級映画。

エル・トポ

18位 愛のむきだし

監督:園子温

大した中身はないB級映画。監督の露骨に変なものを撮ってやろうという姿勢が少々癪に障るものの、それが意外と良い方向に転がっている。4時間という長さも満島ひかりの怪演によって何とかなっている。あまり良い映画とはいえないけれど、変なもの好きとしては一応推しておきたい、いや、推しておかざるを得ない一作。

愛のむきだし

17位 シャイニング

監督:スタンリー・キューブリック

キューブリック監督作品。双子の少女、赤い液体が流れだすシーン、迷路、ジャック・ニコルソンの顔などなど、象徴的に映像を撮る試みのお手本といえる作品。ストーリーの方は少年の特殊能力がイマイチ活かしきれていなかったりして、手放しに褒めることはできないが、感覚に直接訴えかける映像の作り方は見事と言うほかない。洋画ホラーなので、背筋が凍るようなJホラーに慣れた日本人にとっては、怖さは物足りないかもしれない。

シャイニング

16位 マッドマックスシリーズ

監督:ジョージ・ミラー

マッドマックスシリーズは、メル・ギブソン演じる無口なマックスの活躍が爽快なカルト映画。一作目は低予算ながら、荒廃した世界で多くを語らずに悪を駆逐するマックスのかっこよさによりヒット作となった。このヒットを受けて作られた続編のマッドマックス2は更に狂気と面白さが増しており、これを元にあの名作マンガ「北斗の拳」が作られたほど。

マッドマックス

15位 ダイ・ハードシリーズ

監督:ジョン・マクティアナン他

頭脳派で人間味溢れる新たなアクションヒーローの誕生。正統派アクション映画はダイ・ハードで完成したと言えるほどの完成度。シリーズ1作目は悪役ハンスの冷徹さが映画を引き締め、131分という上映時間が一瞬で過ぎ去るように感じるほど緊張感にあふれた映画。シリーズ2作目~4作目も、1作目ほどではないが十分に面白く、続編がキッチリと成功し続けた良いシリーズ。ただし5作目は駄作。

ダイ・ハード

14位 ノスタルジア

監督:アンドレイ・タルコフスキー

クラシックしかり、圧倒的に優れた芸術というのは眠いものなのかもしれない。タルコフスキー作品も同様で、長く難解なセリフ回しと美しい自然風景の描写が続き、起きて観続けるのはほとんど困難とも言える映画。ただ、それを超えて本当に美しい。少々退屈でも文句なく芸術的なものに触れたいときにオススメする。

ノスタルジア

13位 マーズ・アタック!

監督:ティム・バートン

見た目がキモすぎる火星人に地球人がやられまくるB級映画。(脳みそが大きいのに)思慮深いようには見えない、そのくせなぜか文明は発達している火星人に全く敵わない地球人。ただ、その残虐すぎる火星人の姿がかつてアメリカ大陸を支配した西洋人と被って見えてくる。まあ、そんな難しいことを考えて観るような映画ではない。「なんか良い」「なんか好き」そう思える映画であり、そういう理屈を超えた感情こそ美しいのではないだろうか。

マーズ・アタック!

12位 猿の惑星

監督:フランクリン・J・シャフナー

とある惑星に不時着した宇宙飛行士3人。その惑星では、猿が英語を喋り、人類は奴隷のような扱いを受けていた…。衝撃的な設定の映画だが、それだけでなく見せ方も上手くて、結論を知ったうえでもう一度見てもやはり面白く感じられる。未見の方は、ネタバレに注意しながら観るべし。ついうっかりするとすぐにネタバレに出くわしてしまうので気をつけよう。

※猿の惑星にはリメイク版も存在するが、リメイク版は駄作。オリジナル版を見ましょう。

猿の惑星

11位 タイタニック

監督:ジェームズ・キャメロン

「アバター」「ターミネーター」そして「タイタニック」。娯楽作品として親しまれているが、その実高い芸術性も誇る不朽の名作をいくつも世に送り出した天才ジェームズ・キャメロン。彼の作品の中でも最も評価されたのが「タイタニック」だ。あまりに有名なので説明の必要もないかもしれないが、二人で船首に立つ象徴的なシーンなど、何度も見たいと思える美しい場面がたくさんある映画。

タイタニック

10位 イレイザーヘッド

監督:デヴィッド・リンチ

奇才デヴィッド・リンチ監督の常軌を逸した作品群の一つ。彼の作品はどれも素晴らしいのだけれど、ここでは濃厚すぎる処女作「イレイザーヘッド」を推しておく。これを20分ほど観てみて、合わなければやめれば良いし、もし面白いと思えるならリンチ作品を全作観てしまおう。彼の作品に意味など求めてはいけない。ただそこにある映像を思考停止して眺めているだけでも、体の芯がその映像を体験し、それが一つの「映画体験」となるのだ。

イレイザーヘッド

9位 テルマ&ルイーズ

監督:リドリー・スコット

日常に倦怠感を感じる女性二人が刺激を求めて旅に出かけ、あれよあれよという間に大変なことになっていくロードムービー。何といっても脚本が映画向きで美しい。中盤以降は特に目が離せない展開。ただし戸田奈津子翻訳字幕が玉にキズで、特有のジョークの多くがスルーされてしまっている。この作品だけでもまともな翻訳家に訂正してもらったものを販売していただきたい。

テルマ&ルイーズ

8位 ダウン・バイ・ロー

監督:ジム・ジャームッシュ

流されるまま、行き当たりばったりに行動する3人の男たちのロードムービー。「大学受験して、良い大学に入り、大企業に入る」ことが成功と考えられる日本社会にあって、「ダウン・バイ・ロー」に描かれるようなあてもなく漂う生き方を観てしまうと、目的に向かって一直線に走り続ける人生が本当に正しいのかと疑う気持ちがふつふつと湧き上がってくる。何でもないロードムービーが見たい方にオススメ。

ダウン・バイ・ロー

7位 ゴッドファーザーシリーズ

監督:フランシス・フォード・コッポラ

「ヤクザがドンパチやるだけの映画でしょ?」と思ってゴッドファーザーをまだ観ていないあなたは、映画人生を損している。トップに立つとは何か。理屈のない信頼とは何か。家族の愛とは何か。末期ガンのようにじわじわと訪れる悲劇の裏に、栄枯盛衰の虚しさが表現されている。そこに完璧にマッチする映像と音楽。アル・パチーノやロバート・デ・ニーロの名演。映画のすべてが凝縮されている。オールタイムベストの常連に相応しい貫禄を持つ作品だ。

ゴッドファーザー1~3

6位 2001年宇宙の旅

監督:スタンリー・キューブリック

芸術的で眠い映画の代表・2001年宇宙の旅。これが眠いのは当たり前。ストーリーの解釈に必要な説明をすべて省き、そこに心地よいクラシックをつけているのだから。この神秘的な名作を楽しむためには、ネットで調べるなり原作となった本を読むなりして予めストーリーを知っておく必要がある。この映画は、ストーリーを知っているという前提で、そのストーリーを天才スタンリー・キューブリックがどのように映像として表現するか、それを楽しむ映画なのだ。そのため、キューブリック作品の1作目としてはこの映画はオススメしない。既に別の作品でキューブリック作品の魅力にとりつかれた人が、さらにその天才性を味わいたい場合には格別の1作である。

2001年宇宙の旅

5位 東京物語

監督:小津安二郎

日本人に生まれたからには、見ておく必要がある映画。海外の批評家からオールタイム・ベストに選ばれることも多い名作を、母国語で堪能できるのは贅沢すぎる。薄まりゆく家族の繋がりを冷徹に描いたテーマは、公開から60年が経過した今も全く色褪せない。むしろ、現代日本人が見るべき映画だといえる。大学進学、就職、結婚、ほとんどの人が何らかのタイミングで実家を離れて暮らすことになる現代、この小津安二郎の名作を見ると胸の奥がぐっと掴まれるような感覚を覚えるはずだ。洋画では絶対に味わえない映画体験がそこにある。

小津安二郎大全集

4位 地獄の黙示録

監督:フランシス・フォード・コッポラ

ベトナム戦争を舞台にした映画。ただし、ベトナム戦争はこの映画の舞台であってテーマではない。「地獄の黙示録」が描き出すのは、暗殺ミッションを課されたウィラード大尉の精神状態の異様な移り変わりだ。この映画には、オリジナルバージョンである劇場公開版とそれより50分長い特別完全版があるが、人間の狂気を映し出す映画としてはオリジナルの劇場公開版の方が優れている。迷ったらまずは劇場公開版を観てみよう。

地獄の黙示録

3位 タクシードライバー

監督:マーティン・スコセッシ

「デ・ニーロ・アプローチ」という言葉が生まれるほどにストイックな役作りをするロバート・デニーロの代表作。戦争から帰りタクシードライバーとなった孤独な青年は、アメリカ社会の矛盾を感じてフラストレーションを募らせる。ネオンが光るニューヨークは、人間が目指すべき発展の姿なのだろうか。虚しさが横たわるストーリーに、美しいサックス音楽と映像がマッチした完璧と呼んでいい映画の一つ。これを見ずして映画は語れない。

タクシードライバー

2位 気狂いピエロ

監督:ジャン=リュック・ゴダール

男女の逃避行を描いた物語。原色を多用した華やかな映像と、意味不明な二人の掛け合い。観る者を無視するように勝手にストーリーは進んでいくが、物語自体はシンプルなので何が起こっているかは簡単に把握できる。ただ、これを解釈しようとすると途方も無い自由が与えられていて困惑する。要するに「好きなように観て感じろ」ということであり、これが心地良い人には心地良い。たとえば旅行する際、常にガイドブックの命じるがまま決められた場所を訪れたいタイプの人はこの映画を観ても一つも楽しくないのだろう。美しいものをただそのまま美しいと、自分の好きなように感じたい人にとっては宝物のような映画になる。

気狂いピエロ

1位 時計じかけのオレンジ

監督:スタンリー・キューブリック

過激な暴力と性に明け暮れる青年が、非人間的ともいえる強制的な治療を受けて暴力を反射的に嫌悪する人間になる話。2001年宇宙の旅より分かりやすいストーリーでありながら、引けをとらない芸術的な映像と音楽。そこに主演マルコム・マクダウェルの遊び心を伴う演技が重なり、芸術と娯楽のバランスが取れた名作となっている。難解さはなく楽しみやすいので、芸術的映画を楽しむための第一作目としてオススメする。

暴力描写がやや過激なので、苦手な人は無理をしないように。

時計じかけのオレンジ

まとめ

映画の役割はいったい何だろうか。人に物語を伝えるという意味では本と似ている。では、映画と本はいったい何が違うのだろうか。一つの大きな違いは、映画ではストーリーと映像と音楽が同時に進行するということだ。名作映画はどれも、ストーリー・映像・音楽の全てが高いレベルで存在し、この三者が混ざり合って一つの芸術となっている。だからこそ、映画とは理解するものではなく、感じるものであり、体験するものなのだ。

この記事で挙げた映画は全て、心で感じる映画だ。全部があなたの心も揺さぶってくれるとは限らないが、多くがそうだと信じている。ぼくの魂が揺さぶられた厳選の50作、その全てをあなたも人生で一度は観てみてほしい。

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