英語の現在完了形の意味と用法をネイティブ感覚で徹底的に解説する。

現在完了形の感覚

英語のネイティブスピーカーが持っている現在完了のイメージは、「過去の出来事が向かってきて現在に影響」だ。過去のある出来事が、ボールのように飛んできて現在の自分にドカーンとぶつかって、「ぐはっ」と影響を受けているような感覚。

一方、日本人にとって現在完了と意味の違いがややこしい過去形は、下図のようなイメージ。

過去形では過去の出来事はただただ昔の出来事として存在しており、それを淡々と過去の出来事として眺めている感覚。現在完了形とは違って、出来事の方からこっちに向かってくるような感覚は過去形にはない。

現在完了形の3用法

日本の英語教育では現在完了の3用法として、

  1. 完了・結果
  2. 経験
  3. 継続

の3つに分類して習う。(完了と結果を分けて4用法と呼ぶこともある)

しかしネイティブスピーカーにとって、現在完了の意味というのはたったひとつ、上に書いた「過去の出来事が向かってきて現在に影響」だけなのだ。以下では、このイメージを「現在完了の3用法」に当てはめながらネイティブスピーカーがどのような感覚で現在完了形を使っているかを説明する。

1. 完了・結果

I have lost my wallet. 「私は財布をなくした」

I have lost my wallet.というふうに現在完了形を使った場合、話者は財布をなくしたことによる現在への影響に注目していることになる。この「現在への影響」の部分は文脈によって様々で、上図のように財布を失くして「お金がない!」ということが言いたいのかも知れないし、お気に入りの財布を失くして「悲しい気持ちになっている」ということが言いたいのかもしれない。

いずれにせよ、現在完了形を使った場合、財布を失くしたことは単なる過去の事実ではなくて、今の自分に対して大きな影響を持つ事件と捉えられていることが伝わってくる。

一方、

I lost my wallet. 「私は財布をなくした」

過去形を用いてI lost my wallet.と言った場合、財布を失くしたことは単なる過去の事実として捉えられている。この場合、財布を失くしたという事実を現在から眺めるような感覚で語っており、特にその事実を現在に結びつけようという意図は感じられない。過去形を使う場合の話者の考えていることとしてピッタリ来るのは、「あのときは不注意だったなぁ…」という過去の自分に対する回想だ。

ちなみに現在完了形の文を日本語に訳す場合、「財布をなくしてしまった」と「しまった」をつけて訳す場合が多いが、この「しまった」という日本語も、過去の事実に対する現在の後悔を表す言葉。つまり「しまった」という日本語も過去の事実から影響を受けた現在の自分を表す表現であり、必然的に現在完了の和訳ではよく使われることになる。

2. 経験

I have read Bushido 100 times. 「私は武士道を100回読んだことがある」

経験用法も同様に、「現在への影響」のイメージで解決できる。この例文では、現在完了形を使うことで、話者は「武士道を100回読んだ」という過去の出来事が持つ「現在への影響」に注目している。この「現在への影響」の部分は文脈によって様々で、「頭がおかしくなってしまった」と言いたいのかも知れないし、「オレは新渡戸稲造マスターだ」と言いたいのかもしれない。上の図では、「武士道を100回読んだ」という過去の出来事がもつ現在への影響に注目し、「オレってもうほぼ武士なんじゃね?!」という現在の自分の状態を語っている。このように、現在完了形は必ず現在の自分に関連させるという感覚を持っているのだ。

一方、

I read Bushido 100 times. 「私は武士道を100回読んだ」

と過去形を用いると、100回読んだという過去の出来事に注目していることになる。この場合、話者が考えていることとしてピッタリ来るのは上の図のような「他にやることなかったしなぁ」といった過去の自分への回想だ。

ここまでで勘の良い方はだいぶ気付いて来たかもしれないが、現在完了形の文を使った場合、次に来る文は現在の話になることが多く、過去形の文を使った場合、次に来る文は過去の話になることが多い。

3. 継続

I have studied English a lot. 「私は英語をたくさん勉強してきた」

継続用法も同様に、「現在への影響」で解決できる。この例文では、現在完了形を使うことで、話者は「今までずっと勉強してきた」という事実を、それが持つ「現在への影響」と関連させて語ろうとしている。「現在への影響」の部分は文脈によって様々で、上の図のように「ペラペラになった」ということなのかも知れないし、「まだまだ上達の途中だ」ということなのかもしれない。いずれにせよ、くどいようだが現在完了形は必ず現在に関連させるという感覚を持っている。

一方、

I studied English a lot. 「私は英語をたくさん勉強した」

と過去形を使うと、英語をたくさん勉強したという事実を現在に結びつけて語ろうという意図は感じられない。この場面で過去形を使う話者が考えていることは、たとえば上の図のように「何て時間の無駄だったんだ!」といった過去の自分(あるいは過去の出来事)に対する回想だ。このように、過去形を使う場合は過去の何かに対して注目しているのであって、現在完了形の「現在に関連させる」感覚とは全然違うというのが分かっていただけたかと思う。

まとめ

現在完了形は、「現在への影響」「現在に関連させる」というイメージを持った表現だ。このイメージを使いこなせるようになってくると、現在完了形の3用法に頼らなくても自然と現在完了の文が読み書きできるようになる。

こうした感覚をネイティブと同じイメージで習得できてくると、相手がその次に何が言いたいかが簡単に想像できるようになってくる。そうするとリスニングやリーディングで先読みができるようになってくるし、理解度も格段に上がってくる。

「日本人だから日本語に訳さないと分からない」を脱却して、イメージで捉える本物の英語力を身に付けていこう。これは大変なように見えるかもしれないが、実は英語習得の一番の近道なのだ。

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