レスター奇跡の優勝達成!時系列でその感動が分かる、下馬評や特集記事の一年間の変化総まとめ

Leicester City flag | Flickr

レスター、奇跡のリーグ優勝達成!おめでとう!

2015/16シーズン、レスター・シティは奇跡のリーグ優勝を達成した。しかしシーズン当初を振り返ってみると、レスターの快進撃を予想するものは皆無に近かった。むしろ、レスターに期待されていたのは残留だ。

本記事では、残留争いが予想されていたチームが優勝を目前とするまでの間に、監督のインタビューでの発言や周りの声がどのように変化していったかを振り返る。

シーズン開始前(~2015年8月7日)

岡崎慎司の加入決定(2015年6月27日)

岡崎がついにレスター移籍!「レスター」ってどんなチーム? – NAVER まとめ

【海外の反応】岡崎慎司、レスター・シティへの移籍が正式決定! | NO FOOTY NO LIFE

前所属ドイツブンデスリーガのマインツで、2季連続二桁ゴールとなる12ゴールを挙げる活躍の後、満を持しての移籍。レスターファンからは喜びの声が多数挙がっていた。ちなみにブンデスリーガでは、シーズン10ゴールで十分な活躍、15ゴールで素晴らしい活躍、20ゴールでは超一流といえる。12ゴールを挙げた岡崎は、プレミアリーグで残留争いをするチームから見れば十分戦力になりうる実績を持っていた。

移籍金は700万ポンド(12.8億円)と、プレミアリーグ全体で見るとそれほど高額ではないが、レスター史上最高額での移籍であり、主力選手として大きな期待を背負っての移籍だった。

岡崎は「プレミアリーグに移籍することは夢だった」と語り、レスターファンは「ヴァーディに加えて良いストライカーが揃った」と喜んだ。ただ、この時点ではもちろん、優勝の二文字を見ることはまだどこにもできない。

ピアソン監督解任発表(2015年7月1日)

【オワタ?】岡崎慎司加入のレスター、ピアソン監督を解任!後任はモイーズ?

レスター監督が電撃解任 岡崎への影響は…? – Goal.com

レスターの岡崎獲得発表からわずか4日。前シーズン終盤に8戦7勝1分での残留を導き、また岡崎獲得に尽力したピアソン監督が解任された。そのため、岡崎の試合出場が少なくなるのではと日本のファンからは不安視された。

始まる前に終わったね

ピアソン代えたらダメだろレスター

何考えてるんだ

と悲観する声多数。後任にはクラウディオ・ラニエリ監督が選ばれた(2015年7月14日)。

戦力不足を指摘する記事(2015年7月22日)

レスターの新監督ラニエリのサッカーとは? そのなかで岡崎慎司はどのように活かされるのか!? 現役イタリア人監督が考察 | サッカーダイジェストWeb

開幕2週間前に発表されたこの記事では、レスターの戦力不足が指摘されている。下馬評では残留争いが予想されていたことが確認できる。

このチームが現在の残留争いゾーンからステップアップして、トップ10入りを狙えるところまで成長するためには、何よりも戦力強化のための投資が必要だ。

プレミアリーグ20チーム中、保有選手の市場価値総額で19位というレスターの戦力は、それ自体が大きな限界だ。

開幕~第7節(2015年8月8日~2015年10月2日)

ホメラレモセズ クニモサレズ (宮沢賢治 「雨ニモマケズ」より)

レスターがそういうものであったこの時期。開幕2連勝、開幕6戦無敗と、期待を上回る活躍をしていたが、ほとんど騒がれることはなかった。

順位の推移は、

1 2 3 4 5 6 7
順位 2 2 2 3 2 4 8
「ごほうびピザ」の始まり(第5節終了時点:2015年9月18日・2位)

岡崎所属のレスター指揮官、今季初完封勝利へご褒美明言「ピッツァを奢る」 | サッカーキング

レスターが5節終了時点で3勝2分の2位につけていた頃に話題になった記事。イタリア人指揮官らしいピッツァのチョイスがほほえましかった。記事中ではラニエリ監督のコメントとして、

とはいえ、同監督は第1の目標が残留にあるということを軽視していない。「目標は勝ち点40獲得だったが……勝ち点40に変えた」と冗談交じりにコメント。好調だが、第1目標は変わらないと語った。

と紹介されている。下馬評のみならず、監督も残留のことしか考えていなかったことがよく分かる。

ちなみに6節は完封に失敗し、2-2の引き分けに終わったので、ピザはおあずけとなった。

第8節~第12節(2015年10月3日~2015年11月20日)

まだ「いずれ落ちる」と誰もが信じていた頃。

順位の推移は、

8 9 10 11 12
順位 5 5 5 3 3

あくまでも勝点40で残留を狙う

初黒星を引きずらなかったレスターに満足のラニエリ 「目標は残留」 – Goal.com (2015年10月4日・第8節・勝点15・5位)

レスター・ラニエリ監督「目標は勝ち点40」首位タイと好調も謙虚さ変わらず – サッカー – SANSPO.COM(サンスポ) (2015年11月8日・第12節・勝点25・3位)

勝っても負けても、首位タイになっても一貫して勝点40を目標に掲げ続けるラニエリ監督。それだけ、レスターがずっと活躍し続けるのは信じ難いことだった。誰もが、「いずれ残留争いに加わるに違いない」と思っていた。

初完封=初ピザ(2015年10月24日・第10節・5位)

岡崎レスター・ラニエリ監督、選手全員にピザおごる – プレミアリーグ : 日刊スポーツ

ピザの約束も忘れず守るラニエリ監督。

訪れた第13節(2015年11月21日~11月27日)

迎えた第13節、レスターは3-0でニューカッスル・ユナイテッドに快勝する。一方、12節までの首位マンチェスター・シティ、2位アーセナルが揃って敗れたため、 レスターはついに単独首位に躍り出た。

それでも狙うは残留(11月21日・勝点28・首位)

岡崎慎司のゴール、レスターのラニエリ監督絶賛「ファンタスティック」 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

もちろん私たちにとって勝ち点を28ポイント手にしていることは重要。目標とする40ポイントまで、あと12ポイントのところまできた。目標以外のことを話すのは、それを達成したあとだ。今、我々は完全に目標だけに集中している

単独首位に立ってなお、ラニエリ監督は目標が残留であることを再度強調。

ヴァーディの連続試合ゴール記録

FWヴァーディの大活躍が騒がれていた時期でもあった。ヴァーディは第4節から連続ゴールを継続し、第15節でついに途切れるまでの間に、プレミアリーグ新記録となる11試合連続ゴールを打ち立てた。

5年前には工場でバイトしながら7部リーグでプレイしていたという出自とあいまって、日本でも大きな話題となった。

11月の月間最優秀監督/選手をレスターが独占

プレミアリーグは毎月、月間最優秀監督と選手を発表している。11月は監督としてラニエリ、選手としてヴァーディが選ばれた。第13節で単独首位に躍り出たチーム全体が評価されての選出といえる。

第14節~第22節(2015年11月28日~2016年1月22日)

レスターの活躍は本物かもしれない。まだレスターを優勝候補と思っている人はほとんどいなかった。しかし、ひょっとすると来季CL出場圏内(4位以内)がありえるかもしれない。そうした予感が生まれ始めた。

順位の推移は、

14 15 16 17 18 19 20 21 22
順位 2 1 1 1 1 2 2 2 2

王者チェルシーを撃破(2015年12月14日・第16節・勝点35・首位)

強豪を抑えて首位に君臨するレスター ラニエリ監督「夢から覚めたくない」 | SoccerMagazine ZONE WEB/サッカーマガジンゾーンウェブ

「ファンと一緒に夢を見続けていきたい」

「選手たちにはまだ『あと5ポイントが必要だ』と言った。私はシーズンの初めに40ポイントを目標に置いた。もし、この目標を達成できたら、その時に目標を変える」

勝点40というシーズン目標がいよいよ(シーズン前半だけですでに)現実的になってきて、目標変更の可能性に言及し始めたラニエリ監督。

「上位に残りたい」(2015年12月29日・第19節・勝点39・2位)

レスター首位陥落もラニエリは上位維持に意欲「プレミアリーグはクレイジー」 | ゲキサカ[講談社]

「今の我々がやっていることはミラクルだよ。今の場所にいるのは事実だし、ここに残りたいと思っている。我々の(本来の)ポジションではないのは分かっているが、ここに残りたいね」

シーズン前半戦を全て終えて、2位で折り返したレスター。「上位維持したい」と、はじめて残留以外の目標を口にしたラニエリ監督。

勝点40達成(2015年1月2日・第20節・勝点40・2位)

勝ち点40到達のレスター ラニエリ監督「選手たちにシャンパンを」 – サッカー – SANSPO.COM(サンスポ)

「勝ち点40だ。ファンタスティックだよ。我々は得点を挙げられなかった。でも、またクリーンシートだ。もちろん、選手たちにはシャンパンをあげるよ。チェアマンがおごってくれるかもね。私はピッツァを買うよ」

「これから我々は次の目標を達成しなければいけない。そして冷静を保つんだ。前半戦で我々は勝ち点39だった。だから、後半戦は勝ち点40を目指そう。難しいことは分かっている。だが、このリーグはクレイジーなんだ。我々は残留した。だから、トライしよう」

なんと、シーズン勝点40を目指してきたラニエリ監督は、ここにきてシーズン後半だけで勝点40をもう一度稼ぐことを目標とした。当初目標を2倍に変更したチーム、監督が今までにいただろうか?前代未聞の下馬評破りの活躍を表している。

この期に及んで、いまだにピザで選手を釣り続ける可愛いラニエリ監督。

トッテナムに勝利(2016年1月13日・第21節・勝点43・2位)

レスターの夢は続く ラニエリ「ファンは夢を見続け、我々はハードワークしなくてはならない」 | TheWORLD(ザ・ワールド)|世界中のサッカーを楽しもう!

「私がビッグクラブを率いているとして、レスターのような相手を見たら同じように『このチームはタイトル争いができる』と言うだろう。だが、言うのとやるのはまったく別のことだ。『レスターがタイトルを獲得できる』と言うのは簡単なことだが、誰もそれを信じてはいないよ」

「誰もがこう思っている。『遅かれ早かれ彼らは失速するだろう』とね。たしかに”小さな”レスターなら失速は普通のことだ。だが、今我々がやっていることは普通のことではない」

後に優勝争いを演じることになるトッテナムからの勝利。ラニエリ監督は優勝争いへの意欲と、それを実践することの難しさを語っている。

第23節~第26節(2016年1月23日~2016年2月26日)

Leicester City ready for kick off | Flickr

順位の推移は、

23 24 25 26
順位 1 1 1 1

これ以降一度も首位を譲らない。

単独首位に返り咲き(2016年1月23日・第23節・勝点47)

第23節、レスターはストークシティに3-0で快勝。一方、前節まで勝点同率で首位だったアーセナルがチェルシーに0-1で敗れたため、レスターが単独首位に返り咲いた。この後レスターは、一度も他のチームに首位の座を譲っていない。

上位との三連戦(24節~26節)

24節~26節は、リヴァプール、マンチェスター・シティ、アーセナルという強豪3チームとの3連戦だった。この3連戦がレスターが優勝争いに残れるかどうかの分かれ目であるとされ、大きな注目を集めていた。

「この3連戦を負け越さなければ、レスターは優勝争いに絡んでくる」。

そう予想されていたが、蓋を開けてみるととんでもない結果が待っていた。

第24節 レスター・シティ 2 – 0 リヴァプール
第25節 レスター・シティ 3 – 1 マンチェスター・シティ
第26節 アーセナル 2 – 1 レスター・シティ

優勝を確実にたぐり寄せる2勝1敗。これはヤバい。3戦目のアーセナル戦に逆転負けこそ喫したものの、強豪との3連戦で6得点3失点の成績は紛れもなく本物である。ぼくはレスターファンではないのだが、この時期は毎週「マジか?!マジなのか?!」と鳥肌が立っていた。この時点で勝点53。

【海外の反応】「これは現実?」岡崎先発のレスターがマンシティとの首位攻防戦に快勝! | NO FOOTY NO LIFE (2016年2月6日・第25節)

これって現実?

今、涙目になっているよ

1998年のオールド・トラフォードでの勝利以来最高の結果だ。信じられない

レスターサポーターの歓喜が伝わる。

今シーズン、うちは残留するかもしれないぞ

こんなネタコメントも。

監督も動揺

【プレミアリーグ】シティを撃破したレスターのラニエリ監督が「今シーズンは狂っている」と本音を吐露。敵将やバルサのピケまでもが躍進チームを賞賛 (SOCCER DIGEST Web) – Yahoo!ニュース (2016年2月6日・第25節)

「今シーズンは狂っている。何故こうなったかについては、わからないけどね。優勝したら…なんて考えていないし、考えたくもない」

まだ優勝のことは現実的に考えられない様子のラニエリ監督。

5千倍の優勝オッズが話題に

5千倍の払い戻しも…レスター優勝ならブックメーカー史上屈指の大穴的中に – Goal.com (2016年2月9日)

リー・ハーバートさんは、レスター優勝のオッズが5000倍だったシーズン開始当初に5ポンドを賭けており、このまま的中すれば2万5千ポンド(約416万円)の大金を手にする

ハーバートさんは現時点で3200ポンド(約53万円)を払い戻すことでベットを取り消す案をブックメーカーから持ちかけられたが、これを断ったという。10歳の頃からレスターファンだったという彼は、「ダメになったとしても、結局5ポンドだからね」と夢を見続けることを選んでいる。

ただの応援の意味でブックメーカーに賭けていたお金が、大金になって返ってくるという夢のような話。53万円程度の払い戻しには当然応じない!

第27節~第32節(2016年2月27日~2016年4月8日)

優勝の現実味が週を追うごとに増してきた時期。下位チームとの対戦が続く中、6戦5勝1分という好成績できっちりと勝点を積み上げた。特に、この時期の5勝はいずれも1-0での勝利であり、ヴァーディやマフレズといった攻撃陣だけでなく、守備陣も格段に成長してきたという印象を与えた。

夢は見ない。ただ走り続ける

2位に勝ち点5差を付けたレスター ラニエリ「夢は見ていない」 | ゲキサカ[講談社] (2016年3月5日・第29節・勝点60・2位との勝点差5)

「私は夢を見ていない。仕事を続けている。ファンは夢を見て、我々は仕事をするんだ。」

“奇跡の優勝”に近づくレスター、ラニエリ監督が胸中語る「我々は夢を見ない」 | フットボールチャンネル | サッカー情報満載! (2016年4月6日・第32節・勝点69・2位との勝点差8)

「レスターの道端でファンに出会うと“夢を見ている”と言われるよ。それでも私はこう言うんだ。『オーケー、君たちは我々のために夢を見てくれ。我々は夢を見ない。ただハードワークをするだけだ』」

ラニエリ監督は自分に言い聞かせるかのように語る。一喜一憂したり、浮かれてしまったりすることなく、地に足をつけて走り続けるレスターの快進撃を支えるメンタリティはここから来ているのだ。

早期払い戻しを選択するファンも

レスターファン早期払い戻しで1190万円ゲット – プレミアリーグ : 日刊スポーツ (2016年3月8日)

これは…。自分なら、優勝まで待ってたかもしれない。

第33節(2016年4月9日~2016年4月15日)

来季CL出場確定(2016年4月10日・第33節・勝点72)

第33節はヴァーディの2得点でサンダーランドに2-0の勝利。5戦連続クリーンシート(無失点)での5連勝となった。ラニエリが5週連続でピザをふるまったのかどうかは、定かではない。

同日に行われた試合で、5位マンチェスター・ユナイテッド、6位ウエストハムが負け・引き分けたため、33節終了時点での勝点がともに53にとどまった。この時点でレスターのシーズン4位以内が確定し、レスターが、そして岡崎慎司が、史上初の来季CL出場権を獲得した。ただしこの段階のレスターにとっては、これは祝福すべき事件ではあっても、驚くべきことではなかった。時間の問題であり、単なる通過点に過ぎなかった。

「私はクビ、チームは降格の筆頭候補だった」

Leicester vs West Ham: Claudio Ranieri remains calm as Foxes close in on remarkable Premier League triumph | Premier League | Sport | The Independent

“Remember, in the first match, Ranieri was first to be sacked and Leicester were first to be relegated. I remember it well.”

「思い出してみよう。初戦の頃、”ラニエリ”は一番にクビにされ、レスターは一番に降格になるはずだった。私はそのことをよく覚えている」

これは第33節終了時点でのラニエリ監督の言葉。ラニエリ監督は、チームが「レスター」であることを強調し、「優勝はまだ確実ではない」「地に足を付けなければならない」と繰り返す。

“Come on, Jamie! We need you!”

この試合2得点を決めたヴァーディは、2月14日の第26節アーセナル戦での得点以来、無得点が続いていた。久々の得点、しかも勝利をもたらす2ゴールという活躍の裏には、またしてもラニエリ監督の言葉があった。

Claudio Ranieri’s three simple words that inspired Jamie Vardy to move Leicester closer to title triumph – Mirror Online

“Come on Jamie, we need you! I need you!,”

「頼むぞヴァーディ、お前が必要なんだ!チームにも、そして私にも!」

ラニエリ監督は、戦術家というよりはモチベータータイプの監督と言われる。適切なタイミングで適切な言葉をかけることで、 選手の能力を最大限まで引き出すタイプだ。日本では戦術家タイプの監督の方が人気ではあるが、こうしたタイプの監督がJリーグに出てきても面白いのではないかと思われる。

第34節(2016年4月16日~2016年4月22日)

ヴァーディの不運な判定による退場もあり、レスターは引き分けに終わった。翌日の試合に2位トッテナムが快勝したため、残り4試合で勝ち点差5と油断できない状況となった。

ラニエリ、動ぜず

Claudio Ranieri unfazed by dropped points as Leicester City give Tottenham title hope | Daily Mail Online –勝ち点を落とし、トッテナムにタイトルの望みを与えてもラニエリは動じていない

‘Never we are worried. We were worried at the beginning of the season to achieve 40 points. Now we enjoy, I never speak with my players about the gap, blah, blah, blah. Everything is in our hands. If we fight and win it’s okay.

全く心配はしていない。シーズン初めは、勝ち点40が取れるか心配だった。今我々は楽しんでいる。勝ち点差やそうしたことについて選手と話すことはない。全ては我々次第だ。しっかりと戦って勝てば、それでいいのだ。

今シーズンのレスターを語る上で、「勝ち点40」はもはや最重要のキーワードの一つとなっている。

ヴァーディ2試合欠場処分

前節退場のヴァーディ、暴言による追加処分を受け入れか…2試合欠場へ | サッカーキング

退場により24日に行われるプレミアリーグ第35節のスウォンジー戦を欠場することが決まっている同選手は、この追加処分により5月1日に開催される第36節のマンチェスター・U戦も出場できないこととなる

チーム得点王のヴァーディが残り4試合中2試合を欠場することが決定した。マフレズも得点力があるとはいえ、チャンスメイクにも重責を担うマフレズに得点まで頼るわけにはいかない。ラニエリ監督、そして岡崎慎司のクオリティがレスターの優勝をいよいよ左右することとなってきた。

もし仮にヴァーディ不在の2試合をレスターが2連勝し、トッテナムが2試合中1試合でも引き分け以下に終わった場合、その時点で優勝が確定する。この場合、レスター優勝決定の瞬間のピッチに最大の功労者であるヴァーディが立っていないこととなる。

第35節(2016年4月23日~2016年4月26日)

レスターがヴァーディ不在の危機を乗り越えて4-0の圧勝劇を演じた翌日の試合、トッテナムが引き分けに終わった。結果、3試合を残して勝ち点差7となり、トッテナムの逆転優勝は難しくなった。レスターの優勝が確率の上ではほとんど決まったといえる週だった。

「少し軽く感じた」ラニエリ監督

レスター監督、優勝に王手も「信じるのは数字だけ」 – サッカー – SANSPO.COM(サンスポ)

我々は残留を目標にスタートした。だが、徐々に選手たちが良くなり、何か特別なことを信じるようになった。今はもちろん、最後まで戦いたいと思っている。誰もが『もう決まり』と言うが、私はそう思わない。私が信じるのは数字だけだ。(トットナムが引き分けたことで)少し軽く感じたよ。少しだけね。我々は(優勝に)近づいている

「少し軽く感じた」のところ、ラニエリ監督は”I was a little more light.”と表現している。難しい単語を使わず、シンプルに”light”と表現するところに、「肩の荷が下りた」感じが表れていてぼくは一番感動してしまった。

 「人生でたった一回のチャンス」

Ranieri wants the bells to ring out for Leicester | Reuters (ラニエリ監督はレスターに祝福のベルが鳴ることを望む)

「人生で初めて、レスターファンはプレミアリーグを獲得できるんだ。信じられないよ。私は現実を見ている。レスターにはあと勝ち点3が必要だ。今こそ、タイトルを獲得する真のチャンスだ。来シーズンは、難しいかもしれない。人生でたった一回のチャンスだ」

2016年4月29日、勝てばリーグ優勝が決定するマンU戦を控えての言葉。人生でたった一回のチャンス…。泣ける。

第36節 (2016年5月1日)

2016年5月1日、勝てば自力優勝が決まるレスターは、マンチェスター・ユナイテッドに引き分け、36節での自力優勝を逃した。翌5月2日、チェルシーに勝たないとレスターの優勝が決まってしまうトッテナム。プレッシャーがかかる中、トッテナムはチェルシーに2点リードを追いつかれて引き分けに終わった。結果、レスターの今季優勝が確定した。

優勝決定後の初インタビューの動画

優勝が決まって翌昼の練習場にて。車上のラニエリ監督へのインタビューを除けば、これが優勝決定後初の長めのインタビュー。

※2018年3月、動画が削除されてしまっておりました。以下、インタビューにおけるラニエリ監督の発言内容の抜粋。

「誰も想像できなかったことを成し遂げられて信じられない気持ちだ」

「来年は優勝は難しいだろう」

「はじめはゆっくりとチームの基盤を築いて、3,4年かけてEL、その次はCLに参加できるチームを作る計画だったが、今年は特別なことが起きた」

「誰も売りたくはないが、チームを去りたい選手もいるかもしれない。そうした選手を無理に引き止めるようなことはしたくない。新しく選手を補強する必要があるが、我々のハードワークの精神をもつ選手でなければならない」

 

第37節(2016年5月8日)

優勝が決まってから初めての試合が、レスター・シティのホームであるキングパワー・スタジアムで行われた。試合開始前には、ラニエリ監督の母国であるイタリアから盲目のオペラ歌手、アンドレア・ボチェッリが招待されて「誰も寝てはならぬ」を披露するなど、大きく祝われた。「誰も寝てはならぬ」は、荒川静香がイナバウアーを披露した際の演技曲として用いられた曲であり、ポール・ポッツがBritain’s got talentで有名になったときに歌った曲でもある。

試合はヴァーディの2ゴールもあり3-1で快勝し、優勝祝いに花を添えた。

ラニエリ監督の隣で一緒にカップを掲げているのは、2部時代からレスターの守備陣を支え続けたキャプテンのウェズ・モーガン。

こちらは盛り上がるファンの様子。

岡崎慎司がこの奇跡の中にいたことを証明する一コマ。

また、この試合1ゴール1アシストというMOM級の活躍を見せたアンディ・キングは、下部組織からレスター一筋で、2008/09シーズンにレスター・シティが3部優勝を果たした頃からレスターでやってきた選手。アンディ・キングはこれで、一つのクラブで3部、2部、1部優勝を果たすという史上初の快挙を果たした。報われるべき人が報われる形となった。

第38節(最終節:2016年5月15日)

レスター奇跡のシーズンの最終節は昨季王者のチェルシーとの試合。優勝争いは既に決していたため、レスターの残る仕事はジェイミー・ヴァーディを得点王にすることだった。第38節開始前の得点王争いの状況は、1位がトッテナムのハリー・ケイン25得点。同率2位が2人、レスターのヴァーディとマンチェスター・シティのアグエロ24得点だった。

ヴァーディを得点王にしようという心意気は試合によく表れていたが、得点はドリンクウォーターの同点弾のみで、試合は1-1に終わった。得点王争いをしていた3選手とも得点を挙げることはできなかったので、結果的にはトッテナムのハリー・ケインが25得点で得点王を獲得した。

年間のインタビューのまとめ動画

この記事は、レスターという弱小(のはずの)クラブが優勝を達成するまでの空気感を伝えることが目的だ。空気感を伝えるためにはやはり、インタビュー動画を見ていただくのが一番良いと思う。年間のインタビュー動画をまとめたいい動画を見つけたので以下に紹介する。※2018年3月、こちらの動画も削除されてしまっておりました。以下、発言内容抜粋。

[If I] remember well in two months they lost all the matches with just one or two draw. But at the end the character of the manager of course, the players, the club, the fans, made a miracle. I want to know. Who is the true Leicester. The first, or the second? I’m sure, the second.

「私の記憶が正しければ、(去年の)初めの2ヶ月、レスターは1つか2つの引き分けを除いては全ての試合に負けた。しかし最後の2ヶ月、監督、選手、クラブ、ファンは奇跡を起こした。私は知りたい。どちらが真のレスターなのかを。初めか、最後か?私は確信している。最後だ。」(2015年7月21日就任会見)

(0:50~)When we make clean sheet, I pay everybody, a pizza.

「クリーンシートなら、みんなにピザをおごるよ」(2015年9月18日)

(0:52~)I want my players to come to the training ground laughing but when we work, very serious.

「私は選手に笑いながら練習に来てほしい。しかし働くときは、とても真剣だ」(2015年9月25日、アーセナル戦前)

(1:05~)I think if you go to your job and you are sad and not happy, you don’t work very well.

「仕事に悲しく不幸な気持ちで行けば、良い仕事はできない」(同インタビュー内)

(1:16~)Our goal is 40 points.

「目標は勝ち点40だ」

(1:35~)The fans is the tomato. Without tomato,it’s not pizza.

「ファンはトマトだ。トマトがなければ、ピザは作れない」(2015年10月29日、初のクリーンシート=初ピザ達成後)

(1:59~)Clean sheet, champagne for my players. yeah, come on. 40 points.

「クリーンシートだ。選手たちにシャンパンだ!素晴らしいだろう、勝ち点40だ」(2016年1月2日、20節ボーンマス戦に0-0で引き分けて)

(2:05~)I’m confident, of course. I am the manager. But I’m (also) very curious. How we respond in these big matches.

「もちろん、私は自信がある。私は監督だ。しかし同時に私は非常に興味がある。これからのビッグ・マッチで我々はどれだけできるのだろう」(2015年11月26日、マンU、スウォンジー、チェルシー、エヴァートン、リヴァプール、マンC戦という連戦を控えて)

(2:16~)It’s magical. It’s magical. And we must continue to work hard because I don’t want to wake up. I want to continue to dream.

「魔法のようだ。魔法のようだよ。我々はしっかりと働き続けないといけない。目を覚ましたくないからね。夢を見続けたいよ」(2015年12月14日、昨季王者チェルシーを撃破して)

(2:39~)If I understood very well. Never, Leicester were at this time top of the league.

「どれだけよく理解し考えたとしても、レスターがいまリーグ首位に立っているなど、どうして予測できただろう」

(2:43~)I know it’s difficult. I know very well. But the league is crazy, we are safe. We have to try. We are having a fantastic season so far. Why, don’t believe?

「難しいのは分かっている。よく分かっているよ。でもこのリーグは狂っているんだ。降格はなさそうだ。挑戦しなければならない。これまでのところ、素晴らしいシーズンを送っている。なぜ、信じないという選択肢があろうか?」(1月2日、勝ち点40達成後)

(2:57~)We work hard. Because it will be fantastic, if in the end, the dream is true.

「我々は働き続ける。なぜって、最後の最後、夢が手中にあれば素晴らしいではないか」(1月25日、ストークに3-0で勝利後)

(3:10~)(Interviewer)Fans were singing, “Gonna win the league” again. (Ranieri)-Yes, it’s fantastic. haha, it’s fantastic. They must continue to dream.

「ファンはまた”Gonna win the league”のチャントを歌っていましたね(注:チャントについてはページ下部参照)」「ああ、素晴らしい、ハハ、素晴らしいよ。ファンは夢を見続けなければならない」(2月6日、マンCを3-1で撃破後)

(3:16~)Can you believe me, if I tell you something?

「信じることができるか、私が何か言ったとしたら?」(3月20日)

(3:19~)No, no, there isn’t pressure, why? Why, pressure? Pressure was at the beginnig, when we had to be saved.

「いや、いや、プレッシャーなんてない。なぜ?なぜプレッシャーなどあろうか?プレッシャーがあったのは初め、残留を目指していた頃だ」(4月18日、ウエストハムに引き分け、トッテナムに勝ち点差を7に縮められて)

(3:40~)Step by Step. That is our philosophy.

「ステップバイステップ。これが我々の哲学だ」

(3:43~)I think Europe is done. Now there is the Champions League. We are fighting for the Champions League.

「ELは手中にある。この先にはCLがある。今、我々はCLを獲得するために戦っている(注:この発言の2日後にはCL出場も確定した)」(4月8日)

(3:50~)I believe, always I believe. I’m a positive man.

「私は信じている、いつでも信じている。私はポジティブだ」

(3:54~)Hey man, we are in Champions League. WE ARE IN CHAMPIONS LEAGUE, man. Dilly-ding, dilly-dong! Come on!

「なあみんな!CL圏内だよ。CL圏内だ!!ディリディン!ディリドン!(注:祝福のベル)カモン!」(2016年4月22日)

(4:00~)Now, we go straight away to try to win the title. Yes, Yes, man!

「今、我々はタイトルへの道を一直線に走っている。イエス、イエス!」

(4:08~)For the first time in their life, the people can win the title of premier league. It’s unbelievable. I’m a pragmatic man, and they need three points more. Now is the real chance to win the title. Next season, never knows, what will happen. Once in the life.

「人生で初めて、レスターファンはプレミアリーグを獲得できるんだ。信じられないよ。私は現実を見ている。レスターにはあと勝ち点3が必要だ。今こそ、タイトルを獲得する真のチャンスだ。来シーズンは、難しいかもしれない。人生でたった一回のチャンスだ」(2016年4月29日、勝てば優勝が確定するマンチェスター・ユナイテッド戦を控えて)

(4:33~)I know, the city is… fireworks. All the city is blue. But we must continue to stay concentrated.

I want to win.

「知っているよ。街が…花火でいっぱいだ。街中が青色だ。しかし我々は、集中しなければならない」(2016年5月2日、マンUに引き分け後、トッテナムが引き分け以下でレスターの優勝が決まるトッテナム対チェルシーを翌日に控えて)

(4:55~)Tomorrow night, I am in the flight, because now I go back to Italy. I will be the last man to know the result in the UK.

「明日夜、私は飛行機の中にいる。イタリアに帰るからだ(注:96歳の母とランチ)。私はレスターが優勝したかどうかを知る、イギリスで最後の人になるだろう」(同インタビュー内)

そして…ラニエリは実際に、レスター優勝をイギリスで最後に知ることとなった。

“We are going to win the league!”「レスター優勝」のチャント

We’re going to win the league,
We’re going to win the league,
And now you’re going to believe us,
And now you’re going to believe us,
And now you’re going to believe us,
We are going to win the league!

※13秒頃からしっかり聞こえ初めます

すごくシンプルで心にくる歌詞。日本語訳するなら「リーグ優勝だx2、お前らもすぐに信じるだろうx3、リーグ優勝だ!」といったところか。

be going toは、willとは違って「このまま行けばその未来が実現する」感覚がある表現。この歌詞の全文にbe going toが繰り返されているのがとても印象的。信じる気持ちがシンプルかつ巧妙に歌にこもっている。

 

 

 

レスター優勝、おめでとう!

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