2015/16シーズン、レスター・シティは奇跡の優勝を達成した。本当におめでとう。
でもそのレスターを率いたラニエリ監督でさえ、来年は10位を目指すと公言している(ラニエリ監督が控えめなのはいつものことなんだけど)。
Claudio Ranieri wants Leicester City to ‘try to fight for a top 10 place’ next season | Metro News
来年初めてのチャンピオンズ・リーグを戦うことを考えても、我々は10位以内を目指して戦うことになるだろう
また、今シーズンはレスターに勝ち点10位上の差をつけられ、36節終了時点で4位につけているマンチェスター・シティを率いるマヌエル・ペジェグリーニ監督も、来季のレスターはトップ8にも入れないと予想している。
レスターの躍進は今季だけだ! マンC監督「彼らは来年8位にすら入れない」 (theWORLD(ザ・ワールド)) – Yahoo!ニュース
今季成し遂げたことは称賛に値するが、彼らは来季トップ8にすら入ることができないと思うよ。現在すべてのビッグクラブは多額の投資によって成り立っている。
※多額の投資で選手を補強しておきながら今シーズンはレスターに勝ち点差10以上つけられ、直接対決では1分1敗という成績を残したマンCの監督の「すべてのビッグクラブは多額の投資によって成り立っている(キリッ」発言はあんまりな気がするが…
また、来シーズンのレスターの優勝オッズより降格オッズの方が低い(=優勝確率より降格確率の方が高いと見積もられている)ということも話題になった:
Leicester City are at longer odds (33/1) to win the premier league next season than to be relegated (25/1) (レスターの優勝オッズ(33倍)は降格オッズ(25倍)より高い)-某海外掲示板より
これほどまでにレスターの来シーズンへの期待度が低い理由は、日頃から欧州サッカーを追いかけている人にはよく分かるが、そうでない人には理解しがたい部分もあるのではないかと思う。なので、以下では普段サッカーを見ない人たちにも分かるように、なぜレスターが今シーズンの躍進を継続するのが難しいと見られているかを解説する。
ブランド力・資金力の欠如
欧州サッカー界には、2種類のビッグクラブがある。
- 伝統ある昔からの強豪クラブ
- 金持ちオーナーの就任により選手の乱獲に成功したクラブ
1はブランド力を中心に、2は資金力を中心に優秀な選手をかき集めて強いチームを作り上げている。ブランド力も資金力もそうそう衰えるものではないため、このどちらかにあてはまるチームは毎年チーム力を維持できることが多い。
レスターはこの2つに当てはまらない(だからこそ奇跡の優勝だったのだけど)ので、来シーズンは以下の2つの問題が生じることになる。
主力選手の引き抜き
選手も人間。いくらレスターに愛着があるとはいえ、彼らにも昔からの夢がある。チェルシーなどの伝統あるクラブや、バルセロナやレアル・マドリードといった誰もが憧れるメガクラブからの誘いが来たら、挑戦したくなってしまうのを責めることはできない。実際、ヴァーディ、マフレズ、カンテの主力3人にはこれらのクラブからの興味がすでに報じられている。
できればレギュラーが確約されているレスターに残った方がクラブも選手も幸せだと思うし、レスターは彼らが残りたいと思うだけの年俸を提示する必要がある。
補強の失敗
いくら今シーズンは世界中が驚愕し祝福するような活躍を見せたレスターとはいえ、来年も活躍する保証はない。来シーズンのレスターへの移籍を望む有力選手は少ないのではないだろうか。たとえば本田圭佑や香川真司だってレスターへの移籍は望まないだろう。そうだとしたら、プレミアリーグ優勝を牽引できるような圧倒的な能力を持つ選手がレスターへの加入を望むだろうか?普通に考えればそれはありえない。
プレミア優勝・CL出場による収入にあわせ、タイ人オーナーが赤字覚悟で更なる補強にお金をつぎ込んでしっかりと戦力を充実させることができたなら、その時初めて優勝争いのことも考えられるだろう。
過密日程の影響
プレミアリーグは欧州4大リーグの中でも一番の過密日程で有名だ。クリスマス~年末年始の4連戦には特に批判も多い(喜ぶファンも多いのだけど)。
過密日程となる理由としては、リーグ戦とは別にカップ戦(トーナメント戦)がFAカップ、キャピタルワン・カップの2つもあること、リーグ開始が1週間遅いことなどが挙げられる。リーガ・エスパニョーラ(スペイン)、セリエA(イタリア)、ブンデスリーガ(ドイツ)ではカップ戦は1つだ。それに、ブンデスリーガはチーム数がプレミアの20に対して18と少ないので、単純にリーグ戦の試合数も少ない。
こうした理由でもともと過密日程となっているプレミアリーグなのだけど、来シーズンのレスターはCLを戦うため、より一層の過密日程となる予定だ。そこで、次の2つの問題が生まれると考えられる。
コンディション不良
今シーズン、36節終了時点でヴァーディは22得点を挙げているが、内訳は前半戦で15ゴール、後半戦で7ゴールとなっている。連戦フル出場のヴァーディには疲れが溜まっているのは明らかだ。来シーズンはここにCLが加わるのだ。CLはグループリーグだけでも最低で6試合は戦うこととなるので、その負担はかなり大きい。
ウジョアや岡崎がヴァーディと同じレベルで信頼できるストライカーにならない限り、ヴァーディ級のストライカーの補強に失敗すれば来シーズンのレスターの得点力は落ちることになるだろう。
ケガ人の発生
今シーズン、主力選手に大きなケガが出ずに、スタメンを固定して1年間戦い続けられたのはそれだけでも珍しいことといっていい。活躍するクラブほど、カップ戦等の試合数も増えるので、負傷者も増え、どのクラブも1~2人の負傷者を抱えているものだ。
来シーズンはCLを戦うことになり、過密日程が予想されるので、必然的に負傷者も増えてくる。得てしてチームの大黒柱的存在から負傷離脱してしまうものだ。そうなった場合でもリーグ戦・CL・カップ戦を勝ち抜いていける選手層の厚さが必要となってくる。
戦術面
守りを固める相手の対策
今シーズン後半戦もそうであったが、来シーズンはさらにレスターの対策を講じてくるチームが増えるだろう。実際、レスターは今シーズン前半戦で38得点を挙げているが、後半戦は2試合を残して26得点にとどまっている。その分失点数も減っているとはいえ、やはり得点機会が少なくなっているのは事実だ。
そこでレスターは、相手が守りを固めてきた場合でもそれをこじ開けてしっかりと得点できる布陣を作り上げる必要がある。残念なことに、ヴァーディはカウンターを得意とする選手で、このタイプの選手は相手が守りを固めてスペースをなくされてしまうとなかなか活躍することができない。なので、引いた相手の守りをこじ開けることのできるストライカーを補強し、なおかつその選手がチームにフィットしてくれないと、来シーズンもレスターが得点力を維持するのは難しいだろう。
まとめ&来シーズン順位予想
要するに、来シーズンは試合数が増えるので現有戦力のままでは選手層的に厳しいよ、という当たり前のことです。マフレズやカンテに移籍の噂が出ている現状、現有戦力の維持さえ厳しいかもしれない。来季レスターがもしCL出場圏内に残れたとすれば、それだけでも大健闘と言えるのではないだろうか。
一方、プラスの面に目を向ければ、シーズン後半戦はディフェンスがしっかりしていたのは間違いないので、ここを変に動かさない限り大崩れすることもないのでは、と思う。
ということで、ぼくの勝手な予想…「7位!」(渋い!)