こんにちは。最近は毎日寝る前に将棋を見ているSaitoです。
プロ棋戦の棋譜を見たり、人気ユーチューバー(アゲアゲさん)の将棋を見たり…私自身はあまり強くないのですが、それでも強い人の棋譜はなんとなく綺麗だなぁと思って見ています。
今日は藤井聡太七段の真のレーティングについて考察してみました。前置きが長いので、予備知識がある方は、「藤井七段のレーティングを検討する」まで飛ばしてしまいましょう。
Contents
将棋棋士の強さを測るには?
棋士の強さの基準は何でしょうか。少しおさらいしてみましょう。当たり前のように知っている方は、飛ばしていただいてかまいません。
段位?
段位とは、藤井さんでいう「七段」のことです。プロ棋士は四段からスタートして、最高で九段までのぼります。
将棋をあまり見ない人であれば、「段位は強さを反映している」と思うかもしれません。しかし、段位はあまり強さを反映していません。なぜなら段位は、スピードの差こそあれ、基本的には上がり続けるものであって、年齢を重ねるとともに実力が衰えていっても段位は下がらないからです。
したがって、段位というのはその棋士の将棋界に対するこれまでの貢献度の累積値を表しうるものであっても、現在の強さを表すものではありません。
タイトル獲得数?
少し詳しい方であれば、「タイトル獲得数」または「現在のタイトル保有数」と答えるかもしれません。
タイトルというのは、全棋士が出場して争う棋戦のことで、毎年8タイトルをかけて棋戦が行われます。全棋士が参加しますので、単純にタイトルを獲得した棋士は最強に近いということになります。
「タイトルを持っている棋士はかなり強い」というのは間違いありません。しかし、タイトル保有者間ではだれが強いのかを比べることは難しいです。
また、タイトルは最多でも8人しか獲得することができません(実際には、強い棋士が一人で複数のタイトルを持つことが多いので、8人のタイトル保持者がいることは珍しい)。したがって、ほとんどの棋士がタイトルを持っておらず、タイトルを持っていない人の間ではだれが強いのか、ということはなかなか分かりません。
順位戦や竜王戦のクラス?
日曜日の朝のNHK杯を見る方であれば、対戦棋士紹介の際に順位戦や竜王戦のクラスが併せて紹介されていることをご存知だと思います。
順位戦や竜王戦のクラスも、ある程度の強さの目安にはなるのですが、実際のところ棋士の強さをあまり正確に反映しているわけではありません。なぜなら、たとえば順位戦の昇級条件は非常に厳しく、昇級するためには強さにくわえて運やある程度の年月が必要となるからです。したがって、タイトル争いに絡む、あるいは実際にタイトルを保持しているような勢いのある若手棋士が、最下級のC2クラスやそれに近いクラスに在籍しているということも実際にあるのです。
レーティング!
そこで、棋士の強さを知るためによく参照されているのが「レーティング」です。レーティングとは、対戦競技において競技者の強さを数値化するものです。
詳しい話は少し難しいのですが、チェスの実力を示すために数学者によって考案された「イロ・レーティング」という仕組みが一般的に使用されています。
藤井七段のレーティングを検討する
将棋においては、非公式でレーティングを計算しているサイトがあり、最もよく参照されているのはこちらの棋士ランキングです。
たとえば、2019年2月7日現在では以下のようなレーティング表となっています。
順位 | 棋士名 | レート | 今年度増減 | 前年同月比 |
---|---|---|---|---|
1 | 広瀬章人竜王 | 1902 | 68 | 85 |
2 | 渡辺明棋王 | 1902 | 132 | 127 |
3 | 豊島将之二冠 | 1883 | 4 | 3 |
4 | 藤井聡太七段 | 1860 | 64 | 72 |
5 | 永瀬拓矢七段 | 1858 | 7 | 13 |
6 | 羽生善治九段 | 1832 | -15 | 6 |
7 | 千田翔太六段 | 1831 | 61 | 54 |
8 | 佐藤天彦名人 | 1813 | 30 | 10 |
なんと8位の佐藤天彦名人や、6位の羽生善治九段よりも上位の4位です。藤井七段よりも上にいるのは全員タイトル保持者となっています。
このレーティングは、数学者が考案しただけあってかなり正確に棋士の強さを反映していると信じられているわけですが、こと藤井聡太七段に関しては、いくつかの視点から「本当にこのレーティングで合っているのか?」と考える人もいるわけです。
疑問その1:藤井七段のレーティングは既に収束しているのか?
藤井七段の成長スピードが速すぎて、レーティングが追い付いていないのではないか(真のレーティングはもっと高いのではないか?)という視点です。
この観点からは、下記のサイトで詳細に検討されています。
藤井聡太七段の真のレーティングを算出!!羽生善治七冠に匹敵していたことが判明!!
検証方法はシンプルで、
・仮想のレーティングを出発地点として、ある一定期間の勝敗を追体験させて、レーティングを計算しなおす。
・出発時の仮想レーティングをうまく設定すると、勝敗の追体験後のレーティングが出発時のレーティングと同一になる。そこが収束後のレーティング。
ということです。
結論としては、(2018年9月頃の試算で)収束後のレーティングは1900を大きく超えるとのことです(時期によっては2000を超えていた時期もあるよう)。
2019年2月7日現在、同じ試算をしてみると、収束後のレーティングは1928となりました。
1928は、現在のレーティングでいえば全棋士中トップの値です。
これは直近の順位戦C級1組の昇級をかけた近藤五段への敗戦を含む計算となっております。ちょっとサービスして、敗戦前までで収束レーティングをとってみると、1944になります。
疑問その2:藤井七段はトップ棋士との対戦では負けが多いのではないか?
今度は逆に、藤井七段のレーティングは過大評価なのではないか?という視点です。強いと言われる藤井七段ですが、トップ棋士との公式戦ではあまり勝てていないイメージもあります。
そこで、「藤井七段のレーティングが高いのは、他のトップ棋士と比べて格下との対戦が多いからではないか?」との疑問を立てることができます※。
※イロ・レーティングの計算式には、対戦相手が格上や格下であることによる補正が入っているので、格下との対戦が多くても問題にはならないと考えるのが普通かと思います。しかし、競技の性質上、格上が格下に負けにくい(番狂わせが起きにくい)競技とそうではない競技があり、そうした競技の性質の差がイロ・レーティングでは考慮されていないということを考えると、格下との対戦が多いプレイヤーのレーティングが適切に計算されない可能性はあると考えられます。
これについても検証してみましょう。
検証方法はシンプルで、対戦時のレーティングが1750未満の対戦相手は全てカットしたうえで、先ほどと同様の方式で収束レーティングを計算していきます。
なお、レーティング1750以上というのは、2月7日現在では165名中在籍する棋士の中で、上位18名の棋士にあたります。
なんと、レーティング1750以上の棋士との対戦のみで計算すると、収束後のレーティングは1834まで下がってしまいました。
レーティング1834は決して悪い数字ではないですが、やはり印象通り、格上との対戦ではまだそこまで突き抜けた成績が残せていないということが分かりました。
ちなみに、レーティング1700以上の棋士との対戦まで広げると、収束後のレーティングは1856となりました。
まとめ
以上の結果をまとめると、
・藤井七段のレーティングは今後、1900を超えるくらいまでは伸びていくと思われる。近いうちにレーティング1位になる可能性は十分にある。
・しかし、格下との対戦が多い今だからレーティングが伸びているという側面もある。トップ棋士との対局のみに絞れば、レーティング1900の実力は2019年2月現在ではまだ無い。
ということになると思います。
しかし、藤井七段は現在高校生です。高校生が一番棋力が伸びる時期とも言われています。いったいどのレベルまで到達してしまうのか、考えただけでも恐ろしいほどです。